化血研問題 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

化血研問題

 2015年6月、「一般財団法人 化学及血清療法研究所(化血研)」製造による血漿分画製剤の総てが、承認書と異なる製造方法で作られていることが判明しました。その後、製剤を使用する患者の立場を代表し、「ヘモフィリア友の会全国ネットワーク」は同所へ意見書を提出、併せて複数回にわたって説明を受けました。しかし、化血研自身が事態の全貌を把握するに至っていなかったため、正確な状況がなかなか伝わってきませんでした。

 2015年12月、化血研が設置した第三者委員会の報告書が公表され、同所の長年にわたる不正行為が明るみに出た結果、マス・メディアの報道も一気に増え、化血研は厳しい社会的批判を浴びました。そして、2016年1月には、110日間の業務停止処分を受けることとなりました。

 ただし、化血研の製造した血漿分画製剤が、使用する患者にとって実際に危険なのか、それとも安全なのか、あるいは、なぜこのような事態が起きたのか、どう対処されるべきだったのかなど、多くの疑問点に関しては、未だ明快な回答が出ていない(患者に伝わっていない)嫌いもあります。

 このたび、兵庫医科大学血液内科で血友病の診療をされている日笠聡医師により、化血研問題に関する精密詳細な「まとめ」が作られました。

 これは、日笠先生が、他の医療従事者から“化血研の製剤は何がどうなっているのか、良く判らない”という質問を受けたため、それに応える目的でまとめられたものです。従って、内容・表現が医療従事者向けとなっており、患者にとっては難しい部分もあるかもしれませんが、今回の出来事の経緯が的確に述べられているので、日笠先生の御厚意により、ここに転載します。

 なお、内容に不明な点がありましたら、主治医にお尋ねになるか、または、「ネットワーク医療と人権(MERS)血友病相談電話 0120-722-238(フリーダイヤル)」あてにお問い合わせ下さい(必要に応じて、日笠先生に確認の上、お答えします)。

 

厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(血液事業部会運営員会)議事録
および化血研第三者委員会調査結果報告書からのまとめ

兵庫医科大学血液内科
日笠 聡

化血研問題の経緯のまとめ(PDF)

 概要

 2015年6月5日、一般財団法人 化学及血清療法研究所(化血研)が製造する国内献血由来の血漿分画製剤の全製品について、承認書と異なる製造方法により製造されていることが判明した。以後、悪質な隠蔽工作などが次々と明らかになり、化血研は2016年1月18日から5月6日まで110日間業務停止処分となった。化血研での実際の製造方法と、製造販売承認事項との不整合の内容については化血研の内部調査とともに化血研第三者委員会(化血研が設置した、同所から独立する外部の委員のみで構成された委員会)によって明らかとされ、第三者委員会報告書では31カ所の不整合が指摘されている。第三者委員会報告書に記載されている不整合の大部分は、化血研の内部調査資料「化血研製品の承認書との不整合について」にも記載されているが、「化血研製品の承認書との不整合について」における不整合は20カ所で、第三者委員会報告書よりも少ない。

 しかしこの違いは、「化血研製品の承認書との不整合について」では、製造工程の中で不整合がある20カ所に番号を付与しているため、一つの番号(製造工程)に複数の不整合が記載されているものがあるのに対し、第三者委員会報告書では各不整合の項目一つ一つに番号を付与しているためである。ただし、ボルヒールに関する3項目は、第三者委員会報告書にのみ記載され、「化血研製品の承認書との不整合について」には、その他の項目に含まれているものと、記載されていないものがある。

 

不整合一覧表

(表1.「不整合一覧表」参照)

 

 31カ所の不整合は、承認書に記載していないヘパリンの添加、承認書と異なる量の添加剤の使用、承認書に記載された工程の一部改変・省略の3つに分類される。

 ヘパリンの添加とは、原血漿からクリオ上清を採取した後、PPSB分画を採取する工程で使用されているヘパリンのことを指すが、このヘパリンはその直後の陰イオン交換クロマトグラフィーにて除去されており、製品中のヘパリン含有量は検出限界以下、あるいは極めて微量であることが、後に確認されている。

 承認書と異なる量の添加剤には、塩化ナトリウム、献血アルブミン20及び25、(上記と異なる工程部分で使用されている)ヘパリン、グリシン、L- ヒスチジン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート80(P-80)、カプリル酸ナトリウム、クエン酸、D-マンニトール、ペプシン、あるいは各クロマトグラフィーで使用する溶液成分の組成などがあるが、これらはもともと医薬品製造において安全性が確認されている添加物であり、大部分は承認書に記載されているものである(その添加量が承認書と異なる)。

 上記の添加物の中で、もともと承認書にないものは、ヘパリン、ヒスチジン、PEG、P-80、クエン酸、であるが、これらは他社の凝固因子製剤の最終製品中にも含有されている物質である。

(表2.「凝固因子製剤(最終製品)に添加されている物質」参照:ヘパリンはPPSB「ニチヤク」、ヒスチジンはクロスエイトMC、コージネイトFS、アドベイト、ノボエイト、ベネフィクス、P-80はコージネイトFS、アドベイト、ノボエイト、ベネフィクス、クエン酸はPPSB「ニチヤク」の最終製品にそれぞれ含有されている。)
 
 

凝固因子製剤

(表2.「凝固因子製剤」(最終製品))

 

 工程の一部改変・省略には、加温工程の追加や省略、分画条件の違い、凍結乾燥条件の違い、ペプシン処理時間の違い、濾過工程の追加、pH管理幅の違い、硫酸アンモニウム分画の省略、製品粘度の違いなどがある。

 これら不整合には、明らかに「不整合のもの(19カ所)」もあるが、「不整合に該当しない可能性もあるもの(7カ所)」や、「以前は承認書記載に明確な規定がなかったため不整合とは言えなかった部分もあるが、承認書記載の詳細化以降は不整合と考えられるもの(8カ所)」も含まれる。(同一カ所で複数の不整合がある場合があるため、これらの合計は31カ所よりも多い)

 これらの不整合の大部分は、1980年代後半から1990年代初め頃から生じている。一方、現在使用されている化血研の血漿分画製剤の大部分は1990年代初めに製造販売承認を受けたものであり、ほぼすべての製剤において、承認書通りに製造していた期間よりも、承認書と不整合のある製造方法で製造されてきた期間の方が遙かに長い。

 2014年に製造販売が承認されたバイクロットはもちろん、1991年より販売されているノバクトMなども臨床試験の段階から承認書と不整合のある製造方法で製造されており、これまで承認書通りに製造されたことは一度もない。とすると、承認書と違う方法で製造された製剤で、基礎実験、臨床治験を行い、基礎・臨床データを提出して製造販売承認を得た(そして長年臨床で使用されてきた)製剤は、法的、倫理的に問題はあっても、医学的にはすでに有効性・安全性が証明されていることになり、今あらためて安全性を確認する必要はないのでは?という疑問が生じるが、実際安全性が未確認なのはバイクロットやノバクトの主成分ではなく、安定化剤として添加されているアルブミンやアンスロビンPであることに留意する必要がある。

 アルブミンやアンスロビンPは製造工程において、クリオ上精液そのものと、クリオ上精液にヘパリンを添加して生成された脱 PPSBクリオ上清液を用いて製造された中間原料を様々な比率で混合して製剤化されていたため、製品のLotごとにその比率が異なり、これがウイルス不活化・除去の性能にどう影響するかが確認できていないことから、それが添加されている製剤の安全性確認が必要となったものである。

 

図1.「化学及び血清療法研究所の血漿分画製剤の製造フロー図(概略)と不整合箇所

(図 1. 「化学及び血清療法研究所の血漿分画製剤の製造フロー図(概略)と不整合箇所」参照)

 

 ただし、アルブミンやアンスロビンPは60℃、10時間の液状加熱処理がなされており、この方法で加熱処理した血漿分画製剤によるHBV、HCV、HIVなどのウイルス伝播はないものと考えられる。(理論上、この方法でもヒトパルボウイルスB19や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の伝播は考えられるが、これは他のすべての血漿分画製剤に共通する)

 短期間の臨床実績しかない、あるいは臨床実績が全くない、ただし承認書通り製造された製剤と、長期間の使用実績はあるが承認書と不整合のある方法で製造された製剤の、どちらをより医学的に安全と考えるかは非常に難しい。

 もちろん倫理的には、承認書通りに製造された製剤が正しいものではあるが、今後化血研が製造方法の一部承認申請を行い、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査を受け、厚生労働大臣の承認が得られれば、現在の製造方法が正しい製造方法となる予定である。

 今回の問題発生後、ただちに化血研が製造している血漿分画製剤は出荷停止となったが、当初から製剤の使用禁止とはしない、回収もしない、(=製剤自体の安全性に大きな問題はない)と厚生労働省は判断しており、その時点で製剤の安全性については厚生労働省(と化血研?)的には結論が出されているように思われる。問題発覚直後の厚生労働省(と化血研?)の判断根拠は、以下の5点と推測される。

  1. HBV、HCV、HIV、パルボB19など既知のウイルスに関する安全性については、原料血漿、プール血漿、最終製品の3カ所でNAT検査がされていること
  2. ヘパリン追加に関しては、工程中の陰イオン交換クロマトグラフィーで除去できていると推定できること
  3. 添加物の違いについては、もともと医薬品製造において安全性が確認されている添加物を使用していること
  4. 大部分の不整合が生じてからすでに15年~20年以上経過していること
  5. これまで、特に今回の不祥事に起因すると考えられる重篤な副作用報告がないこと

 後に発行される化血研第三者委員会報告書においても、安全性に関しては、「本件不整合に係る血漿分画製剤の安全性については、販売前に適正な手続を経た国家検定 ※ を受けて合格していること、重篤な副作用の報告がなされたという事実が確認できなかったこと及び第三者委員会において化血研が行った製剤品質への影響についての検討結果の根拠を精査したが、当該根拠に不合理な点は見当たらなかったことなどから、本件不整合に係る血漿分画製剤が人体に対して危険を及ぼすことを示す証拠は見当たらなかった。」と記載されている。

( ※ 筆者注 国家検定:生物学的製剤基準 http://www.nih.go.jp/niid/ja/mrbp.html 参照)

 各製剤により検査項目は若干異なるが、含湿度試験、 pH試験、たん白質含量試験、活性化凝固因子否定試験、凝固性たん白質含量試験、無菌試験、異常毒性否定試験、発熱試験、力価試験、血液凝固第Ⅱ,Ⅶ及びⅩ因子否定試験、エンドトキシン試験、活性化血液凝固第Ⅶ因子の力価試験、血液凝固第Ⅹ因子の力価試験、FⅦa/FⅩ含量試験など)

 化血研の血漿分画製剤出荷停止後、これを代替する薬剤がないもの、あるいは代替する薬剤に変更した場合に不都合(有害事象)が生じる可能性があるものに関しては、薬事・食品衛生審議会薬事分科会 血液事業部会運営委員会の審議を経たうえで、2015年7月28日からバイクロット・アナクトC、9月15日からコンファクトF、10月7日から献血ベニロン、2015年11月2日からノバクトM新規格の緊急的・例外的な再出荷が認められ、市場における欠品は回避されている。

 この間にも化血研製剤の安全性の検証が行われており、2015年7月21日の第2回委員会では、最終製品のヘパリンの残存はほとんどないことが報告(コンファクトFのみ9月9日の第3回委員会で報告)され、9月9日の第3回委員会では、安定化剤として使用されているアルブミンのウイルス不活化・除去の性能(ウイルスクリアランス)が確認されたことが報告されている。

 以下に問題発覚後の経緯を要約して記載するが、詳細は厚生労働省血液事業部会運営委員会のWebサイト(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127854)に掲載されている議事録、配布資料、あるいは化血研の Webサイト(http://www.kaketsuken.or.jp/)などを参照いただきたい。

 なお、化血研が当該不正行為を行うに至った経緯、動機、その他これらを巡る事実関係、並びに化血研が製造するワクチン製剤、及び化血研の品質管理におけるコンプライアンス体制等を巡る事実関係等に関しては、化血研第三者委員会調査結果報告書に詳細が記載されているので、このまとめでは言及しない。

 化血研問題の経緯

2015/5/28 以前より

化血研では、所内で血漿分画部門において不整合の解消を試みる動きがあった。
→内部告発(時期不明)

2015/5/28~29

PMDAによる化血研の立入調査が実施され、国内献血由来の血漿分画製剤の全製品について、製造販売承認書と異なる製造方法により製造されていることが判明。

2015/5/30~31

化血研は、理事長及び理事出席による緊急対策会議を開催し、国内献血由来の血漿分画製剤の全製品について出荷自粛を決定し、今後の出荷に関して厚生労働省と協議することとなった。

2015/6/1

化血研は、厚生労働省に国内献血由来の血漿分画製剤の全製品について出荷を自粛する意向を伝え、今後の出荷に関して協議。

2015/6/4

化血研は、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課から、血漿分画製剤12製品26品目について出荷を差し止めるとともに、承認内容の一変承認申請等の必要な対応を速やかに行うよう指導を受ける。これと同時に、代替製品が存在しない又は代替製品に切り替えると患者の生命に影響を及ぼす一部の製品・品目については、医療現場での使用に影響が出ないよう、現在の正確な製造工程、製造記録等により安全性を確認した上で、一変の承認等必要な対応が取られる前であっても、例外的に出荷することが認められる。

2015/06/05

化血研による血漿分画製剤の出荷自粛について、 2015年6月5日付けにて添付の文書が化血研、及び厚生労働省から報道各位へ向けて通知

 化血研の通知文

報道関係各位

血漿分画製剤の出荷自粛について

一般財団法人 化学及血清療法研究所

 一般財団法人 化学及血清療法研究所(本所:熊本市、理事長:宮本誠二)は、所内調査の結果、当所が製造販売する国内献血由来の血漿分画製剤の全製品について製造販売承認事項との齟齬が確認されましたので、当所からの出荷を自粛することとしましたのでお知らせ致します。

 本事案につきましては、現在全所を挙げて早急に対応している所でございます。

 なお、これまでに供給した製品について、現時点で本事案に関連すると思われる健康被害の報告は受けておりません。

 今回、患者様、医療関係者の皆様並びに関係各位に多大なご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。今後の出荷の再開につきましては改めてお知らせ致します。

以 上

 厚生労働省の通知文

報道関係者 各位

一般財団法人化学及血清療法研究所において製造販売される血液製剤について

 一般財団法人化学及血清療法研究所(以下「化血研」)において、同社が製造販売する血液製剤のうち12製品26品目(別紙)が、承認書と異なる製造方法により製造されていることが判明しました。

<承認書と異なる製造方法>

・承認書に記載していないヘパリンを添加。

・承認書に記載された量と異なる添加剤を使用。

・承認書に記載された工程を一部改変・省略。

 これら12製品26品目について、これまで把握した情報や現在までの健康被害の報告からは、健康に重大な影響を与える可能性は低いと考えます。

 厚生労働省としては、12製品26品目について、出荷を差し止めるとともに、速やかに承認内容の一部変更申請等必要な対応を行うよう、化血研に指導しています。

 さらに、代替製品がない、又は代替品に切り替えると患者の生命に影響を及ぼす6製品16品目(別紙1~6)については、医療現場での使用に影響が出ないよう、現在の正確な製造工程、製造記録などにより安全性を確認した上で、一部変更承認等必要な対応がとられる前であっても例外的に出荷を認めることとしています。

2015/6/23 平成27年度第1回血液事業部会運営委員会

 薬事・食品衛生審議会薬事分科会 血液事業部会運営委員会 委員

大平 勝美  はばたき福祉事業団 理事長

岡田 義昭  埼玉医科大学病院 輸血・細胞移植部 准教授

田野﨑 隆二  国立がん研究センター中央病院 輸血療法科 科長

花井 十伍  ネットワーク医療と人権 理事

室井 一男  自治医科大学附属病院 輸血・細胞移植部 教授

山口 照英  日本薬科大学 客員教授

 厚生労働省より不正発覚と出荷停止の経緯と代替製品がない製剤についての方針説明

 代替製品がない・代替製品に切りかえると患者の生命に影響を及ぼすような6製品16品(アナクトC、ベニロンI 、献血グロブリン ※※ 、コンファクトF、ノバクトM ※※※、バイクロット)については、医療現場での使用に影響が出ないよう、現在の正確な製造工程、製造記録などにより、暫定的に安全性を確認した上で、一変承認等の必要な対応がとられる前であっても例外的に出荷を認めることとしている。

献血ベニロンI:

 ギラン・バレー症候群、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫性血管炎)の治療に使用する場合については、適応が献血ベニロンしか認められていない。現在まだ献血ベニロンIの安全性が確認されていないが、供給が逼迫している。このため、これらの効能について、他のグロブリン製剤の使用を検討せざるを得ない状況。

 →議事でポリグロビンとヴェノグロブリンとグロベニンの3製品(Fcが改変されていない完全型のもの)で代替をするよう対応することに決定。

※※ 献血グロブリン:

 胸腔内・髄腔内・脳室内に投与可能な唯一のグロブリン製剤。

※※※ ノバクトM:

 代替製剤はあるが、製剤変更によるインヒビター発生リスクを考慮。

 血液事業部会運営委員会委員に対して化血研より説明
  • 10年以上前から一変申請をせずに製造方法を変更。
  • 承認された製造方法と異なる点は2桁ぐらい。
  • 承認書に記載していないヘパリンを添加。
    →理論的には工程の途中でヘパリンは除去されるはず。現在確認作業中。
  • 承認書に記載された量と異なる添加剤を使用。
    →詳細な内容の説明はなし。
  • 承認書に記載された工程を一部改変・省略。
    →詳細な内容の説明はなし。
  • 在庫と供給・再出荷について
    →これから調査。
 議事
  • GMP違反を査察官は何故見過ごしたのか?
    →この時点で回答なし。
  • 代替品がないものは一変申請をしないまま出荷すると判断されているが、その基準は誰が決めるのか?
    →浅沼血液対策課長:緊急事態なので、役所で判断した。
  • ヘパリンの最終濃度とか、「異なる添加剤」についてのデータは?
    →現在品質評価を行っているので、詳細を述べることはできないが・・・
  • ヘパリンに関しては工程の複数の箇所で添加して製造を行っているが、今回問題となるヘパリンの添加は、製造の上流工程。ただし、この直後に陰イオン交換クロマトグラフィーが下流に入っているので、へパリンは除去されるというデータが取得できつつある。添加剤については、詳細は述べられないが、医薬品の添加物として基本的には認められたものであり、量的にも問題がないことを確認済み。
  • 工程の一部改変省略は工程の安定化、または収率のコントロールのために製造部門で技術開発を行ったもの。
  • ウイルスクリアランスについてはただいま検討中。

2015/7/21 平成27年度第2回血液事業部会運営委員会

参考人:天野景裕(東京医科大学臨床検査医学科)、藤井輝久(広島大学病院輸血部)、 松下正(名古屋大学病院輸血部)

 化血研より、本問題の発覚の経緯説明

       厚生労働省側の監視指導・麻薬対策課が情報を把握→PMDAの特別調査に至る。

 化血研製剤全体の在庫状況の開示

献血ベニロンは6-7月で、バイクロットは8月で在庫切れ見込み

他の製剤は10月~2016年1月に在庫切れ見込み

最終製品中のヘパリン残存量

  バイクロット、アナクトC、ノバクトM、献血グロブリン・・・定量限界以下

  献血ベニロン・・・ごく微量

  コンファクトF・・・検討中

(筆者注:コンファクトFの製造工程では本来ヘパリンは使用されないが、添加剤のアルブミンの製造工程で承認書にないヘパリン添加があったため、念のため測定中)

最終製品のNAT検査・・・すべて陰性

(原血漿は、HIV、HBV、HCVは日赤のNAT試験陰性確認済み、化血研で受け入れ血漿についてHAVとヒトパルボウイルスB19陰性を確認、プール血漿にした段階で、再度、HIV、HBV、HCV、HAV、パルボウイルスを再確認)

 化血研の各血液製剤の状況
バイクロット:

バイクロットは8月上旬に流通在庫が消尽予定。

添加されているアンスロビン・アルブミンのウイルス不活化・除去性能がヘパリン添加により影響を受けていないかどうか試験中だが、データの解析を待つと2カ月以上欠品。

→化血研在庫の一部の緊急出荷を承認

今回緊急に出荷するバイクロットの使用基準(厚生労働省より提案)

・試験の評価が終わり、例外的出荷が可能になるまでの間、ノボセブンHIとファイバの2製剤を代替として使用することを推奨。

他の2製剤よりもバイクロット投与の有益性が明らかに上回ると主治医が判断した場合は、患者及びその家族に対して、適切なインフォームド・コンセントを実施の上、バイクロットの使用が可能。

→欠品を避けるため緊急に在庫の一部の出荷を承認

注射用アナクトC:

化血研在庫については、ヘパリンがウイルス不活化・除去の性能に影響しないことが確認済み。その他の製造方法の変更が安全性に影響を与える可能性は低いと考えられる。

→新規患者の発生により供給が逼迫しないよう、一部変更承認等の前でも、例外的な化血研在庫の一部の出荷を承認。

献血ベニロンI:

出荷停止の間は他の免疫グロブリン3製剤の代替使用を推奨使用された46症例において重篤な副作用の報告なし。

 血漿分画製剤の安全性について

・承認書にないヘパリンを追加した製造方法で分画されたPPSBから製造されているボルヒール、バイクロット、アナクトC、ノバクトMの有効成分の部分は、ヘパリンがウイルス不活化・除去の性能に影響しないことがこの時点で確認済み。

 しかし、クリオ上清と脱PPSBクリオ上清を種々の比率で混和したものから製造されているアンスロビン、アルブミン、および免疫グロブリン製剤は、混和の割合の違いが ウイルス不活化・除去の性能に影響するかどうか未確認。従って。このアルブミン、アンスロビンが安定化剤として添加されている、ボルヒール、バイクロット、アナクトC、ノバクトMの最終製品も、ウイルス不活化・除去の性能が、この時点では未確認。

 議事
  • 10年間査察に入っていながら見つからないものなのか?
    →調査中で、まだ実態が解明されていない。引き続き、必要に応じて運営委員会に報告する。
  • コンファクトFについては、代替製剤としてコンコエイト-HTがあるが、事実上市場にほとんどないので、コンファクトFの欠品は避けねばならない。

2015/7/28

 厚生労働省より化血研に向けての通達(薬食血発0728第5号)
  1. 類似のバイパス製剤であるノボセブンHI(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社) 又はファイバ(バクスター株式会社)を代替して使用すること
  2. 但し、これら類似の2製剤を用いた場合、十分な止血効果が得られないなど医療上の重大な支障を来す患者もいることから、こうした患者の治療に応えるため、緊急避難的な対応として、出荷待ちとなっているバイクロットの在庫の一部出荷を認めること
  3. なお、バイクロットを使用する場合、(別紙1)のとおりその使用基準に基づいて使用するとともに、(別紙2)を用いて安全性確認の状況等に関する患者からのインフォームド・コンセントの取得の徹底を図ること

2015/7/29

 化血研より医療関係者に向けて、「バイクロット配合静注用に係る対応についてのご案内」、「緊急出荷されるバイクロットの使用基準」、およびインフォームド・コンセントのための資料「バイクロットを使用されている患者の方々へ」を発行

バイクロットを使用されている患者の方々へ
  • バイクロットは、化学及血清療法研究所(化血研)が製造し販売している、国内の献血血液から作られたバイパス製剤です。
  • 化血研は、国が承認した方法とは異なる方法で血液製剤を作っていたことが分かったため、出荷を止めております。現在、国が承認した方法とは異なる方法で バイクロットを作った場合、ウイルスをどれだけ取り除くことができるかどうかの確認をしている最中です。なお、バイクロットの止血効果については国の機関で確認されています。また、現在のところ、バイクロットによる感染症や重篤な副作用の報告はありません。
        (化血研の血液製剤は、以下のとおり”国が承認した方法とは異なる方法”で作られていました。)

・ 添加物の量が違う。
・ 作り方が一部違う。
・ 使っていないはずのヘパリン(ブタの小腸から得られた、血液をサラサラにする物質)が使われている。

  • 現在、バイクロットの在庫がほとんどない状況ですので、ウイルスをどれだけ取り除くことができるかどうかの確認ができるまでの間、患者の方々に出血があった場合は、類似のバイパス製剤であるノボセブンHI(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社)もしくはファイバ(バクスター株式会社)を使用していただくよう、主治医の先生方にお願いしているところです。
  • しかし、ノボセブンHIやファイバを使っても出血が止まらない患者の方々で、バイクロットを使うことで出血が抑えられる患者の方々は、主治医の先生とよくご相談いただき、バイクロットを使用していただいても構いません(そのための在庫については、確保いたします)。
  • 患者の方々にはお手数をおかけすることもありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  • ヘパリンの影響について
  1. 現在、製造中に使われるヘパリン(血液をサラサラにする物質)が、ウイルスを取り除く性能に影響を及ぼさないことの確認を行っています。
  2. 最終製品にはヘパリンは入っていません。
  3. 最終製品に含まれる血液を固まりやすくする凝固因子の効果(第Ⅶ因子活性と第Ⅹ因子活性)は、国の機関による試験でも確認されています。
  • 感染症に対する安全性について
  1. 献血から得られた血液は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV(エイズウイルス)、ヒトパルボウイルスB19、梅毒などを、最新の検出技術で調べられており、基準に合格したもののみ、原材料として使用しています。ただし、検出できないくらいごくわずかな量のウイルスや、調べていないウイルスが残っている可能性は否定できません。
  2. 製造工程の中で、ウイルスを減らす処理(乾燥加熱処理、ウイルス除去膜による濾過、化学的処理など)を行い、さらに最終製品の中に、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、HIV(エイズウイルス)、ヒトパルボウイルスB19が混入していないかどうか、核酸増幅検査(NAT)という遺伝子検出技術を使って調べています。ただし、検出できないくらいごくわずかな量のウイルスや、調べていないウイルスが残っている可能性は否定できません。

2015/9/9 平成27年度第3回血液事業部会運営委員会

 化血研より、その後の経緯説明
  • 組織体制の見直し、第三者委員会の設置
  • 血漿分画製剤の製造フロー図の提示
  • 内部調査による承認書との不整合(製造フロー図の20カ所とその他2カ所)の開示
 化血研の各血液製剤の状況
安全性確認:

バイクロット(7/29出荷済のロット)、コンファクトにおける ウイルス不活化除去能に影響がないことが確認済み。工程の改変や承認書と異なる添加剤も、安全性に関する報告から影響を与えている可能性は低い。

バイクロット:

化血研在庫の一部を7月29日出荷。

注射用アナクトC:

化血研在庫の一部を8月15日に出荷。

コンファクトF:

1,000単位は10月下旬に流通在庫が消尽予定。

→化血研在庫の例外的な出荷、または新規製造ロットの出荷を了承。

ウイルスクリアランスの確認が取れた後の出荷であるが、製造工程の改変もあるので、情報を付けて出荷(9/30発行「コンファクトF注射用250・注射用500・注射用1000 承認書との不整合及び安全性について」)

ノバクトM:

現行の1,600単位、800単位、400単位の規格から、2,000単位、1,000単位、500単位の高濃度の規格に切り替える予定。

献血ベニロン:

8月末までにギラン・バレー症候群に141例、チャーグ・ストラウス症候群に33例に代替製剤を使用。重篤な副作用の報告なし。

 議事

・6月5日の時点で判明していたこと(不整合)よりも、9月9日に判明したことの方が内容が広がっているが、これでおそらく出尽くしたはずと思われる。

・最も重要な意思決定は、一番最初に回収しないと決めた意思決定で、安全上問題ないという意思決定だと思われる。

・運営委員会としては、限られた情報で意思決定したり、それから、広がった情報で意思決定したりしているということを自覚しながら進まなければならない。

・安全か安全でないかという基準がウイルスクリアランスだけなのかバイクロットは安全確認がされるまで。コンファクトFは別にインフォームド・コンセントとか要らないのですかね。

→浅沼血液対策課長

はい。

・それは安全だから。

→近藤課長補佐

 バイクロットは、前回、ウイルスクリアランスに関して確認がとれる前に緊急に出荷を認めていただいたという経緯ですが、今回、コンファクトFに関してはウイルスクリアランスが確認されておりますので、今回は例外的出荷という形で出荷を認めていただきたいと思っております。

2015/9/17

化血研よりコンファクトFの出荷にあたり、「出荷についてのご案内」と製品包装箱内に添付される文書が発行。

 製剤製品包装箱内に添付される文書には、コンファクトFの製造工程中に承認書に記載していないヘパリンを添加していること、承認書に記載された添加剤の量が異なること、承認書に記載された工程を一部改変・省略を行っていること、安定剤として用いているアルブミンに添加されているカプリル酸ナトリウムの量がアルブミンの承認書と異なっていること、出荷差し止めの指示を受けていたこと、とともに、今回、厚生労働省による安全性の確認がおこなわれ、安定供給の確保の観点から例外的な出荷が認められたことが記載されている。

 また、同梱している添付文書と、実際の製品の成分に違いがあるため、その正誤表も示されている。

 この後例外的に出荷された、ベニロン(10/9~)、ノバクトM(11月~)、献血グロブリン(2016/1/14~)、バイクロット(2016/1/29~)にも、製品包装箱内に同様の文書が添付されることになる。

2015/9/30

 化血研より医療関係者向けに、コンファクトFおよびアナクトCの「承認書との不整合及び安全性について」が発行。

 この「承認書との不整合及び安全性について」には、承認書と異なる添加物の名前・量、変更した工程の内容、ヘパリンの添加についての記載と共に、安全性に関する厚生労働省の見解が記載されている。

 この厚生労働省の見解には、

・安定剤として用いているアルブミンに添加されているヘパリンは、厚生労働省が定める基準を満たした安全なものであり、最終製品でのヘパリン残存量は定量限界未満。

・製造工程におけるウイルス不活化・除去については、化血研に止めている在庫のロットNo.****において、安定剤のアルブミンに含まれるヘパリンの量が、ウイルス 不活化・除去の性能を評価した試験に用いた検体と異なる可能性があるため、念のため試験を実施した結果、ウイルスに関する安全性については確認された。 なお、その他の製造方法の変更が安全性に影響を与える可能性は低いと考える。 と記載されている。

 この「承認書との不整合及び安全性について」は、この後例外的に出荷された各製剤についても同様に、出荷決定時に化血研から発行されることになる。

2015/9/30 平成 27年度第4回血液事業部会運営委員会

 化血研の各血液製剤の状況
安全性確認

バイクロット、コンファクトF、ノバクトM、注射用アナクトC、献血ベニロンのウイルス不活化・除去性能に問題がないことが確認済み。ヘパリン、その他製造方法の変更が安全性に影響を与える可能性は低い。

バイクロット・注射用アナクトC:

在庫の出荷以降重篤な副作用の報告はなし。

コンファクト F :

9月15日に出荷。

献血ベニロン:

9月25日までにギラン・バレー症候群については228例、チャーグ・ストラウス症候群については44例の代替製品の使用があり、重篤な副作用はなし。

他社の代替品も、一部の規格について、年末頃には在庫が枯渇してくる可能性がある。

→化血研在庫出荷を承認。

2015/10/9

 化血研より献血ベニロンの出荷にあたり、「出荷についてのご案内」と製品包装箱内に添付される文書が発行。あわせて医療関係者向けに、献血ベニロンの「承認書との不整合及び安全性について」が発行。

2015/10/19 平成27年度第5回血液事業部会運営委員会(議事録は2016年1月20日公開)

参考人:花房秀次(荻窪病院)

 化血研の各血液製剤の状況

バイクロット、注射用アナクトC、コンファクトF、献血ベニロンについては、これまでの運営委員会で化血研在庫の一部出荷を承認。これまでに重篤な副作用の報告なし。

バイクロット:

→新規ロットの出荷を承認し、ウイルス不活化・除去の性能に問題がないことを確認できる前に出荷したBY001と002については、BY006が出荷された後は出荷しないことに。

コンファクトF:

→追加の化血研在庫出荷を承認。

献血ベニロン:

10月7日以降、化血研在庫の順次出荷を開始。

→他社製品の使用状況:9月末までにギラン・バレー症候群については241例、チャーグ・ストラウス症候群については52例の使用。いずれの適用に対しても重篤な副作用の報告なし。

ノバクトM:

→化血研在庫の出荷を承認。

アナクト C :

→化血研在庫の出荷を承認。

 一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)の血液製剤の出荷を認める場合の手続きについて(案)
 (これまでこの委員会で出荷を認めた手順をあらためてまとめたもの)
  • 化血研より、製造実態について承認書と異なる点を整理した資料を新旧表の形で品目ごとに提出→厚労省で確認、検討の上、文書として確定• 各製剤について需給が逼迫する場合には、ウイルス不活化・除去の性能を評価することで一定の安全性について確認
  • 安全性が確認できた際には、厚労省において、製造実態の内容どおりに製造しているかを確認。国家検定対象品目については、国家検定に合格済みであるかを確認。出荷に当たり化血研が作成する医療機関や卸向けのお知らせ文書やQ&Aについても、厚労省のほうで確認。
 議事
  • 化血研の製剤についての説明はなかなか難しいが、化血研から臨床現場への情報提供や、主治医から患者への情報提供の内容が、この委員会ではわからないが、実際どのようになっているのか?

2015/11/3

 化血研よりノバクトMの出荷にあたり、「出荷についてのご案内」と製品包装箱内に添付される文書が発行。あわせて医療関係者向けに、ノバクトMの「承認書との不整合及び安全性について」が発行。

2015/11/18 平成27年度第6回血液事業部会運営委員会(議事録は2016年1月20日公開)

 化血研製剤全体の在庫状況
コンファクトF:

11月3日に化血研在庫の一部を追加出荷。

出荷に当たっては、MRから医療機関に対して、コンファクトFに含まれる添加物の類薬との比較など、安全性に関する説明をしている。

ノバクトM:

11月3日に高濃度の規格のロットを出荷。

出荷に当たって、高濃度の規格への切りかえをあわせて案内。

→流通在庫の逼迫に備え、さらに化血研在庫の一部の追加の出荷を承認。

献血ベニロン:

他社製品の使用状況は、10月末までにギラン・バレー症候群については340例、チャーグ・ストラウス症候群については75例の使用。いずれの適用に対しても重篤な副作用の報告なし。

流通在庫が1カ月未満となることが予想され、代替製剤を含めた免疫グロブリン製剤全体の需給が逼迫。

→化血研在庫の一部の追加出荷を承認。

 議事
  • バイクロットについては、ロットによって説明が違うという形になっており、うまく説明するのが難しい。
  • 安全性で今確認されているのはウイルスクリアランスだけで、安定性等を含めて全てを確認しているわけではないので、そのような情報提供があってしかるべき。
  • このような状況において、インフォームド・コンセントをどういうふうにしていくか。
  • もし全てのデータがそろっているのだったら、製造方法の一部変更変承認を受けているはずだが、今は承認になっていないのでデータが足りないと思われる。   
  • 第Ⅸ因子は、化血研以外に日本血液製剤機構も血漿由来の第Ⅸ因子があると思うが、増産である程度補うことは無理か?→化血研の40%前後のシェアをカバーするのは無理。もし代替するのであれば外資の遺伝子組換製剤になると考えられる。
  • 製造方法の一部変更申請はもうされたのか。
    →申請に必要なガイドラインに沿った安定性試験のデータがそろっていない。   
  • 安定性試験というのは実際にはどのくらいの期間で、いつぐらいになると申請が承認される見通しか?
    →最近承認したようなバイクロットやノバクトMは、一応データがあるので、かなり短くなるが、そうでないものについては、例えば、安定期間が2年のものであれば2年終わった上で申請するのか、暫定的認めるのか、当局と相談予定。
  • 製造方法の一部変更申請が1年、2年というスケールになるなら、他社製品の増産についても考えるべきでは?
  • 長期的戦略が必要ならば、緊急的な対応とは別の議論が必要。   
  • もともとの承認書に基づいた製造に戻せないのか?
    →最も戻せない方法はヘパリンの添加という工程なので、凝固因子製剤がすべて製造できなくなる。(1991年製造承認の)ノバクトMの治験の段階ですでにヘパリンを添加しており、その時点で承認書には書かれていないので、承認書どおりに作れない。
  • 適切なインフォームド・コンセントを文書として何かしらのものを検討して欲しい。   
  • 製剤が現在逼迫していることについて、より具体的で定量的なデータ、情報を集めて提示して欲しい。
  • 他のメーカーの増産の可能性について、ほかのメーカーの方を呼んで議論できないか検討して欲しい。
  • 安全性の確認について、PMDAなどでの意見を参考にした上で、この運営委員会で評価しやすいような形にして欲しい

2015/12/2 平成 27年度第7回血液事業部会運営委員会

 議題
  • 化血研の血液製剤の代替製品を供給する製造販売業者の状況について
    (一般社団法人日本血液製剤機構(JB))
  • 患者へのインフォームド・コンセントについて
  • 化血研第三者委員会調査結果報告書について

1 月末現在、議事未公開

配付資料のみ公開

2016/1/6 平成27年度第8回血液事業部会運営委員会

1 月末現在、議事未公開

配付資料のみ公開

2016/1/14

 化血研より献血グロブリンの出荷にあたり、「出荷についてのご案内」と製品包装箱内に添付される文書が発行。あわせて医療関係者向けに、献血グロブリンの「承認書との不整合及び安全性について」が発行。

2016/1/29

 化血研よりバイクロットの新規ロット(BY006)出荷にあたり、「出荷についてのご案内」と製品包装箱内に添付される文書が発行。あわせて医療関係者向けに、バイクロットの 「承認書との不整合及び安全性について」が発行。

 このバイクロットに関しては2015年7月28日に出荷したロット(BY001、BY002)と安全性の確認状況が異なっており、7月28日のバイクロットはウイルスクリアランスが証明される前の出荷なので緊急(避難的な)出荷、今回はウイルスクリアランスが証明された後の出荷であるため例外的出荷という位置づけになっている。(2015年8月15日のアナクトCの出荷以降に出荷された製剤は、すべてウイルスクリアランスが証明されており、例外的出荷となる。)なお、2015年7月28日に出荷したバイクロットも後にウイルスクリアランスが証明されている。

 考察

 化血研は薬害エイズ裁判(非加熱凝固因子製剤によるHIV感染被害者が、製薬会社と厚生省に対して損害賠償を求めて提訴した民事訴訟:HIV感染被害損害賠償請求事件)の被告企業ではあったが、その後血友病領域ではインヒビターの止血治療に用いるバイパス止血療法製剤の開発に取り組み、1990年代に乾燥濃縮人活性化血液凝固第Ⅶ因子製剤(MC-7)の臨床開発を行った。MC-7は最終的には製造承認に至らなかったが、続いて2006年から乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子(MC-710)の臨床開発を行い、バイクロットとして2014年7月に製造承認を取得している。

 一方で化血研は2009年に、1991年から販売中の血漿由来第Ⅸ因子製剤(ノバクトM)の第Ⅸ因子表示量が実測値と乖離していることを報告し、それまで250、500、1000単位として販売されてきたノバクトMを、400、800、1600単位の表示にそれぞれ変更して販売することになった。

 この表示量の乖離の原因は生物学的製剤基準の改定に伴う力価試験法の変更、および自家標準品から国内標準品への変更によるものではあるが、これについても力価試験法の変更がなされたのは1997年であり、本来であれば10年以上前に変更手続きをするべきものであった。

 このノバクトMの力価変更のおかげで、日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会は、その前年(2008年)に発行していた「インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン」のノバクトMに関する部分について、修正文を発行することになった。

 この経過において化血研は、法令・制度の遵守がずさんであるという印象を与えることにはなったが、他の国内の血漿分画製剤メーカーは、加熱凝固因子製剤の承認後には新規凝固因子製剤の開発を全く行ってこなかったこともあり、上記バイクロットを開発した化血研の評価は、昨今相対的に高くなっていたように思われる。

 このような背景の下、 2015年6月5日の化血研、及び厚生労働省監視指導・麻薬対策課、血液対策課からのプレスリリースにより、突然今回の問題が明らかとなった。化血研のプレスリリースには、当所が製造販売する国内献血由来の血漿分画製剤の全製品について製造販売承認事項との齟齬が確認されたため出荷を自粛すること、これまでに供給した製品について、現時点で本事案に関連すると思われる健康被害の報告は受けていないことが記載されているが、その他の情報はない。

 一方、厚生労働省監視指導・麻薬対策課、血液対策課からのプレスリリースには、承認書と異なる製造方法の内容として、承認書に記載していないヘパリンを添加、承認書に記載された量と異なる添加剤を使用、承認書に記載された工程を一部改変・省略、が記載されているが、それ以上の詳細な情報はない。そして、化血研の血漿分画製剤12製品26 品目について、これまで把握した情報や現在までの健康被害の報告からは、健康に重大な影響を与える可能性は低いこと、代替製品がない、又は代替品に切り替えると患者の生命に影響を及ぼす6製品16品目については、現在の正確な製造工程、製造記録などにより安全性を確認した上で、必要な対応がとられる前であっても例外的に出荷を認めることが記載されている。

 すなわち、全体として化血研の製造している血漿分画製剤の安全性について、あまり危機感を抱かせない内容となっており、(ノバクトMの容量変更の時と同様、)化血研は法令・制度の遵守がずさんであるという印象は与えるものの、悪質、あるいは危険という印象はあまり抱かなかったと記憶している。このため、筆者は化血研の製剤を使用している患者に対して、「製剤の使用を中止したり、積極的に変更しなくても良いと考えている。」と説明した。

 6月23日には平成27年度第1回血液事業部会運営委員会が開催されたが、この会議では不整合の具体的内容はほとんど公表されず、不正発覚・出荷停止の経緯と、今後代替製品がない製剤については例外的に出荷を認める方針について審議されただけであった。

 7月21日の第2回血液事業部会運営委員会では、在庫が減少しているバイクロット、注射用アナクトCの緊急出荷が承認された。そして、緊急出荷されるバイクロットについては、製造工程のウイルス不活化・除去の性能について念のため評価しているため、この評価が終了し出荷が再開されるまでの間は、類似のバイパス製剤であるノボセブンHI、ファイバの2製剤を代替として使用することを推奨することとし、他のバイパス製剤2剤(ノボセブンHI、ファイバ)と比較して、バイクロット投与の有益性が明らかに上回ると主治医が判断した場合にのみ、患者及びその家族に対して適切なインフォームド・コンセントを実施した上で、バイクロットを使用することとなった。

 緊急出荷にあたって配布された文書には上記方針も記載されているが、患者・主治医ともに、この配布文書の内容について「バイクロットはできる限り使わず、どうしても必要な時だけに使用を限定する」と受け止めた人も、「一応他の製剤を使用することが推奨されてはいるが、必要な場合はバイクロットを使用しても構わない」と受け止めた人もいたと推測される。ちなみに筆者は、緊急出荷されるバイクロットはこれまでの製造方法と同じ方法で製造されていること、最終製品にNAT検査が行われていること、最初のプレスリリースに、「これまで把握した情報や現在までの健康被害の報告から、健康に重大な影響を与える可能性は低い」との記載があり、製剤の使用中止(抑制)あるいは回収にはならなかったこと、安全性を懸念させるような新事実が判明したわけではないこと、などから、「一応他の製剤を使用することが推奨されているが、必要な場合はバイクロットを使用しても構わない」と説明した。

 そして、バイクロット以外の血漿分画製剤(ノバクトMやコンファクトF)についても同様に判断し、当初の説明と同様「製剤の使用を中止したり、積極的に変更しなくても良いと考えている。」と説明している。しかしこの説明は後述の血液事業部会運営委員会での議論とは意図が異なっているように思われる。

 9月9日に開催された第3回血液事業部会運営委員会では、ようやく化血研から、内部調査による承認書との不整合(製造フロー図の20カ所とその他2カ所)についての情報が開示された。この内容はWebサイトで議事録、配付資料が公開されたが、厚生労働省および化血研から臨床現場に積極的に情報提供されたとは言えず、Webサイトを閲覧した人だけが知る情報となった。

 しかし、その後例外的に出荷される個々の血漿分画製剤には、製剤製品包装箱内に説明文書が添付されるようになり、医療関係者向けには化血研から「承認書との不整合及び安全性について」が発行されるようになったため、これらを読めば個々の製剤の承認書と異なる添加物の名前・量、変更した工程の内容、ヘパリンの添加についてと、安全性に関する厚生労働省の見解を知ることができるようになった。これを読むと、出荷される化血研の製剤は基本的に安全が確認されている、と判断する医療者が多いと思われる。

 一方、血液事業部会運営委員会においては、化血研の血漿分画製剤は、承認書通りに製造されていないのだから、(どのような危険性があるかわからず、)可能な限り、他の製剤への変更を推奨するニュアンスの議論が、特に10月19日に開催された第5回、および11月18日に開催された第6回の血液事業部会運営委員会でなされている。しかしこの血液事業部会運営委員会の議事録は2016年1月20日まで公開が遅れたため、結局この議論で委員が述べている「可能な限り、他の製剤への変更を推奨し、どうしても必要な時だけに使用を限定する」という意図は臨床現場には伝わっていない。

 12月3日に化血研第三者委員会調査結果報告書が一般に公開されたが、この報告書に記載されている不整合の内容については、1つを除いてすべて内部調査による報告の中に含まれており、新たに確認された重大な不整合は見あたらない。しかし、不整合の始まった時期が報告されているため、「化血研の製剤は、承認書と不整合のある製造方法で製造されてきた期間の方が、承認書通りに製造していた期間よりも遙かに長い、あるいはそもそも治験段階から一度も承認書通りに製造されたことがない」という事実が、よりはっきり認識できるようになった。

 同時に製剤を承認書通りに製造した場合には、多くの製剤は治験のデータも臨床での実績もない、ある意味新薬となり、これまでの不整合の下で製造した場合よりも安全である、とも言えないことが明らかとなった。

 報告書の情報を元に考えると、製剤の選択は、「承認書とは不整合があるが、おそらく安全と推定される方法で製造され、臨床治験のデータを元に製造販売が承認となり、その後の長期間の臨床実績がある製剤」をより安全と考え、化血研の製剤の使用を継続する方にメリットが多いと考えるか、それとも不整合に伴う未知のリスクを回避するために積極的に代替製剤に変更する方にメリットが多いと考えるか、の比較衡量になり、一概に「可能な限り他の製剤への変更を推奨」できるとは思えない。

 しかし、血液事業部会運営委員会の議事録や配布資料、第三者委員会報告書などから、これを読み取るには、それなりの知識が必要であり、かなり時間をかけて注意深く読む必要があるため、化血研の製剤を使用する多くの一般臨床医にはかなり難しいことのように思われる。

 そしてこの報告書には、不整合の内容とともに、長期にわたる悪質な隠蔽工作が記載されていたため、以降マスコミによる報道が一気に過熱することになった。この報道によって、(血液事業部会運営委員会の議事録や配付資料を見ていない)多くの臨床医や患者は、不整合の内容よりも先に、悪質な隠蔽工作について見聞きすることになったと考えられる。

 以後、悪質な隠蔽工作と化血研に対する行政処分についての報道が連日繰り返され、化血研の企業イメージが一気に悪化したことにより、不整合について十分な情報をもたない医療従事者や患者は、化血研の製造する血漿分画製剤は安全なのか?という疑念をこの時期になって改めて抱くことになった。

 しかし実際には、6月以降市場に流通している、あるいは例外的に製造あるいは再出荷が認められた化血研の血漿分画製剤は、実際の承認書とは異なった方法で製造されたものであり、6月以前の製剤と異なる点は何もなく、業務停止処分となった後もこの状況は続いていく。

 化血研問題は、「現在使用している(これまで使用してきた)血漿分画製剤が真に安全な物なのかが問われた事件」という意味では薬害エイズ事件以来の出来事であり、「安全性に関する情報が時間の経過とともに徐々に明らかになった」という点でも薬害エイズ事件と類似する部分がある。

 しかし、この二つが大きく異なる点は、安全性を判断するための正確で詳しい情報が、薬害エイズ事件では当初は世界中のどこにも存在しなかったのに対し、今回の事件では少なくとも化血研の内部(と査察を行ったPMDAや厚生労働省?)には存在していることだろうと考えられる。

 薬害エイズ事件を経験した者にとって、製薬メーカーや厚生労働省の情報には誤りがあるかもしれない、と考えるのは自然なことと考えられるが、薬害エイズ事件は、文字通り未知の病原体に関するリスクを手探りで評価していく中、真実が明らかになる課程で相反する学説が出現し、結果的に解釈・判断を誤ったことによって起こった事件である。

 これに対し今回の事件は、相当に確からしい情報が特定の場所に存在しているにもかかわらず、その情報がわかりやすい形で迅速に提供されないために、いつまでも漫然とした不安感・不信感が払拭されない状態が続いていることに問題があり、薬害エイズ事件とは本質的に異なるものと考えられる。このような状況を鑑みると、できるだけ早く安全性に関するわかりやすい情報の提供が必要ではないかと考える。

 本稿の概要に記載したような、不整合の内容、各添加剤、製剤の承認時期と不整合の発生時期の位置関係、国家検定の内容、安全性の確認の経過、などはすべてインターネット上に公開されているが、それぞれ断片的な情報として散発的に配置されており、各情報を求めて熱心に探索しなければ手に入らず、全体を俯瞰で見渡すこともできない。これでは、一般の臨床医や患者にわかりやすく情報提供ができているとは言えないのである。

 そして今後、化血研の血漿分画製剤は各不整合について、医療用医薬品の承認事項一部変更承認申請を行い、PMDAの審査を受け、厚生労働大臣の承認が得られれば、現在の製造方法が正式な製造方法になる。しかし、第三者委員会の報告書には、ノバクトMの製造工程におけるヘパリンの添加について、当該製法を承認すれば当局から臨床試験のやり直しを指示されて上市の遅れが生じる可能性があったために添加を秘して承認申請を進めたとの記載もあり、不整合の中には本来であれば何らかの臨床データを付与しなければ承認されないものが含まれているのでは?という疑念が残る。

 そのためPMDA(厚生労働大臣)の承認の際には、今回の不整合はすべて基準に照らして軽微変更届出または一部変更承認申請の範疇にあり、本来であれば何らかの臨床データを付与しなければ承認されない不整合はない、という情報の公表も必要であろうと考えられる。

 このまとめは2016年1月末までに筆者が入手した情報を基に作成した。

 情報は刻々と変化しており、この時点で公開されていない血液事業部会運営委員会の議事録をはじめ、今後の状況によってこのまとめの内容も順次変更していく予定である。

 本資料の作成にご協力・ご助言いただいた皆様に厚くお礼申し上げます。