第1回(1999年)報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

第1回(1999年)報告

薬害根絶フォーラム
~全国薬害被害者団体連絡協議会結成~

筆者:花井 十伍(全国薬害被害者団体連絡協議会 代表世話人)

サリドマイド、スモン、薬害エイズと薬害は繰り返されてきた。国はその度ごとに薬害防止を誓いながら、ソリブジン、薬害ヤコブ、予防接種被害と薬害被害の再発は続いている。医療が高度化するに伴い、使用される医薬品の種類は増加の一途をたどり、今後さらに悲惨な薬害発生の危険性が増している。今年の8月24日、東京、大阪HIV薬害訴訟原告団、弁護団の強い要求の結果、薬害根絶「誓いの碑」が厚生省正面に建立された。この碑文の中には、「医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねてゆくことをここに銘記する」と刻まれている。

しかし、薬害再発防止を考えるとき、過去の薬害の発生の原因を徹底的に究明した上で問題のある要因を根気よく改善していくことがもっとも重要である。それにもかかわらず、薬害エイズの例をみても、厚生省はその基礎資料となる発生原因調査すら満足に行っていないのが現状である。「全国薬害被害者団体連絡協議会」はこの状況を打破するために、今まで「薬害根絶」へむけた活動をそれぞれに取り組んできた被害者8団体によって結成された、日本初の薬害被害者全国組織である。

結成当日である10月22日には、厚生省と文部省に要望書を提出し、活動のこけら落としを行った。文部省への要望は、薬害被害の教訓が教育の現場に生かされていないとの問題意識からであった。そして、その翌日10月23日、「薬害根絶フォーラム」を目黒区福祉センターホールで開催、もちろん主催は「全国薬害被害者団体連絡協議会」である。「薬害根絶フォーラム」では、第1部において、サリドマイド、スモン、MMRワクチン、陣痛促進剤、薬害エイズ、薬害CJDの順にその被害実態が当事者及び当事者家族の口から直接語られた。

当事者が直接語る薬害被害の実態は衝撃的であった。私は司会を担当していたが、持ち時間をオーバーして訴える発言者を制止することはとてもできなかった。薬害エイズに関しては、東京HIV訴訟団の大平勝美氏が発言を担当したが、ときに涙ぐみながらも淡々とした口調で語る氏の話には心打たれるものがあった。

第2部では薬害根絶と教育というテーマでディスカッションが行われた。前日の文部省に対する要望や事前の教科書調査報告から幅広く意見のやり取りが行われた。第2部では私はパネラーとして参加し、社会科の中で公害と薬害の関係があいまいなまま教科書検定が行われていることや、薬害エイズ和解の記述が検定意見によって差し替えられた例を前日の文部省とのやり取りとともに紹介した。第2部ではフロア発言も交えながら、活発なやりとりが行われた。

最後にスモンの会全国連絡協議会の村田忠彦氏が声明文を朗読し、「薬害根絶フォーラム」は閉会した。「薬害根絶」は行政の監視強化のみでは達成できない。薬の最終使用者である患者、市民の監視が不可欠である。又、現実に副作用被害が起きてしまった時の救済の枠組みを拡充することも表裏の問題として重要である。それぞれの薬害の教訓を広く国民全般と共有し「薬害根絶」につなげてゆく活動は始まったばかりである。

声 明

21世紀を迎えようとする今日、医薬品や医療の領域における国際化、高度化には、更なる拍車がかかっている。このような現状については、国民の生活や健康に寄与する部分ばかりが強調され、ともすれば無批判な礼賛によって流されかねない。しかし、かつてサリドマイド、スモン、HIV等多くの悲惨な薬害が引き起こされた歴史を抱えながら、現在もなお、ソリブジン、医原性CJD、予防接種による被害など同様の薬害が繰り返される構造は何ら変わっていない。いや、むしろ更なる薬害惹起の危険性は、増しつつあるとさえ言える。私たち薬害被害者団体は、自らの筆舌に尽くしがたい苦痛に満ちた薬害被害の体験を踏まえつつ、「薬害根絶」を念願し、それぞれに活動を行ってきた。薬害被害者は、厳しい被害に遭いながらも、決して、ただ悲嘆に明け暮れる道を選ぶことはなかった。それぞれの悲しみ、怒り、思いを「薬害根絶」実現の闘いに結集してきたのである。本日、「薬害根絶」へ向けての願いは、団体の枠を越え、様々な被害の在り方の相違や世代の相違を越えて一つとなった。そして、全国薬害被害者団体連絡協議会への結集と薬害根絶フォーラムの開催は、総ての人々が有効で安全な医薬品の恩恵と医療サービスを享受することのできる社会の実現に向けた確実な第一歩となることは間違いない。

これを機として、以下の声明を発表する。

一 国、製薬企業は、薬害発生の原因究明に全力を尽くし、その経緯を徹底して分析、検証せよ。

一 国、製薬企業は、医薬品が国民の健康と命を守るために提供されていることを再認識したうえで、
   徹底した情報開示を行え。

一 国、製薬企業は、私たちの被った被害の教訓を生かした薬害防止システムを早急に構築せよ。

一 国は、副作用被害者総てを対象とする無過失救済システムを創設せよ。

一 国は、「薬害根絶」へ向けて薬害発生の教訓を学校教育に反映させ、次世代のための糧とせよ。

私たち全国薬害被害者団体連絡協議会は、「薬害根絶」を実現するべく、一致団結し、薬害防止システムを創出すべく、研究、提言、その他の活動に日々全力で取り組む。

 

1999年10月23日
全国薬害被害者団体連絡協議会
ビヨンドニュース vol,10より抜粋