MERSシンポジウム2007 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

MERSシンポジウム2007

患者とは何者か?~患者-医療者間の『せつなさ』と『幸福な関係』~

2007年11月3日(土) 13:00~16:30

ドーンセンター 4F大会議室3

主催:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権


 「患者」は病院に行って初めて患者になる。つまり人は、自らの身体が幸福な日常を邪魔する状態に陥ったとき病院の門をたたく。そして苦痛や違和感などを何とかしてくれる医師や看護師がいると信じており、医療者との関係において初めて「患者」になれる。一方で、「病者」というときには、必ずしも医療者の存在を必要としない。身体の苦悶の声とともに在る人々が、自らを病者と認識すれば良いと言える。本来、「病者」は癒しを求める人々に他ならない。
 「患者」、「病者」という表現を分けて考えてみると、病者は患者になることによって、「者」から「病」を引きはがされ、者が病を克服するという医療モデルになじみやすいのかもしれない。こうした場合の「病」はむしろ「疾患」と呼ぶべきなのかもしれない。患者と医師の真ん中に「疾患」という実体があり、その実体を両側から医師と患者が凝視するような構図が浮かんでしまう。けれども合併症や副作用などによって多くの診療科を渡り歩くとき、自分の身体異常は各専門性によって裁断され、自分の全体的な不調な思いや身体は医療機関の中で行き場を失う。
 現代医療は高度な先端技術や専門的知識を持った人々によって担われており、医療機関が「疾患」を治療する機能体として高度化していくことはやむを得ないと言える。しかしながら高度化することが進歩だという価値観と、その行き過ぎに警鐘を鳴らす一般的問題意識との調和点は、誰に・どのように決められていくのだろうか。けれども、現場の医師たちは毎日患者が押し寄せる臨床現場において、日々何度もその決断を余儀なくされている。「医者だって人間だ!」という言葉を封印されたまま、医師としての全能性を期待されている。
 「病名」を告げられたときの患者の違和感とは?医療の高度化によって患者・医療者という立場は、どのように変化していくのか?医療者は治癒不可能な患者の前に立つとき何を拠り所にするのか?こうした問題を考察する事で、「患者中心の医療」「根拠に基づく医療」「説明と同意」「医療倫理」といった問題の原点をとらえ直していきたい。


【プログラム】

13:00 第1部 基調講演
      「医療に哲学は必要か?」 西川勝氏(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)
      「医療に対する当事者の違和感」 ヨシノユギ氏(立命館大学大学院 先端総合学術研究科 在学)
      「医療、福祉、そして癒し」 田口ランディ氏(作家)
15:00 第2部 パネルディスカッション「患者とは何者か?」
      田口ランディ氏、西川勝氏、日笠聡氏(兵庫医科大学血液内科)、ヨシノユギ氏

【講演者】

○ 田口 ランディ(たぐち らんでぃ)

東京生まれ。
広告代理店、編集プロダクションを経てフリーライターに。
1996年、紀行エッセイ「忘れないよ!ベトナム」(ダイアモンド社)を出版。
2000年、長編小説「コンセント」(幻冬舎)を発表。本格的な執筆活動を開始。
2001年、「できればムカつかずに生きたい」(晶文社)で第一回婦人公論文芸賞を受賞。

 

 

○ 西川 勝(にしかわ まさる)

1957年生まれ。高校中退後、種々の職業を経験した後、看護師の母の勧めで精神病院の看護者となる。1998年、大阪大学で「臨床哲学」プロジェクトに参加するため、透析センターから大学近くの老人保健施設に変わる。
その後、デイサービスセンター看護師などを経て現在、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任准教授。
主な論文に「ケアの弾性:痴呆老人ケアの視点」(『看護の臨床哲学的研究』科学研究費研究成果報告書、2003年)「生きる技術、生かす技術」(『岩波応用倫理学講義1』中岡成文編、2004年)。雑誌『精神看護』(医学書院)に「下実上虚」を連載中。

 

○ 日笠 聡(ひがさ さとし)

1962年生まれ。
1987年に兵庫医科大学を卒業後、1990年より血友病診療に従事。1990年代前半、多くの医療機関がHIV感染症の診療を拒否する中、兵庫医大病院において血友病HIV感染者治療に先駆的に取り組み、関西におけるHIV診療の牽引役の一翼を担ってきた。
1996年より関西HIV臨床カンファレンスの理事を務めている。
2001年より日本血栓止血学会の血友病治療標準化検討部会委員となる。
2000年より「NPO法人ネットワーク医療と人権」の理事に就任。血友病、HIV感染症、C型肝炎の包括的な診療ができる、全国的にみても希有な臨床医のひとりである。

 

○ ヨシノユギ

1982年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科在学中。
2002年よりジェンダー・セクシュアリティにまつわる学生運動に携わり、生と性をテーマとした学習会・講演会活動、パレード等を開催する。
2006年、「性同一性障害(Gender Identity Disorder、略してGID)」治療の一環として、大阪医科大学付属病院にて乳房切除手術を受けるが失敗、患部の壊死が起こる。
2007年3月、医療ミスの真相究明と、GID医療の前進を目指して大阪医科大を提訴、係争中である。性別二元論およびジェンダー批判の観点から、「GID」や「女性/男性」のカテゴリーに所属しないことを望み、逸脱を実践する活動家。

 

 

報告はこちらから(MERSニュースレターNo.17より)

概要報告は こちら(MERSニュースレターNo.16より)