「WFH世界大会で見た世界」 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

「WFH世界大会で見た世界」

夏合宿2016報告〈1日目〉

「WFH世界大会で見た世界」

大阪ヘモフィリア友の会 役員 早川 祐哉
日 時:8月6日(土)20:00-21:00
場 所:あたらし屋、215号室

 

 こんばんは、大阪ヘモフィリア友の会の早川祐哉といいます。まだまだ若輩者ではありますが、今回このような場を設けていただき、ありがとうございます。僕は7月20日から31日まで、アメリカ・フロリダ州オーランドで開催されたWFHの世界大会に参加してきました。その参加レポートと、これからの日本の血友病に関して今僕に何ができるのか、何をするべきかということについて発表させていただきたいと思います。

     


 まずはWFHについて、知らない方もおられるかもしれませんが、「World Federation of Hemophilia(世界血友病連盟)」の略でWFHと呼ばれています。世界中の血友病及び類縁疾患患者の治療向上のために様々な働きをする組織です。日本にも大阪ヘモフィリア友の会というローカルな患者会があって、和歌山友の会、万葉友の会、兵庫友の会、洛友会・湖友会など、今回は近畿のローカルな患者会が集まって合宿をしているのですが、WFHの世界大会は、世界中の患者さんが一堂に会して、みんなでいろいろなディスカッションをしたり、パネラーの方が発表をしているのを聞いたりします。
 
世界中の人たちが一斉に交流できるという、とても素晴らしいイベントだと僕は思っています。WFHの世界大会は2年に1回開催されていて、今回はアメリカ・フロリダ州オーランドで開催されました。前回はオーストラリアで開催されて、次回はイギリス・スコットランドのグラスゴーというところで開催されます。

 オーランドといえば何でしょうか?ご存知の方はおられますか?やはりオーランドと聞いても「ん?」となるのですが、オーランドには何があるのかというと、日本では6月にゴルフ場に4メートル級のワニが現れたとか、ディズニーワールドで子どもがワニに食べられたなどと報道されたりして、すごくワニで有名な場所です。あとはナイトバーで銃撃があったりだとか、そんな感じで僕たちが出発する前には少し世間を賑わせていました。有名な施設としてはケネディ宇宙センターという、NASAの見学施設というかアメニティ施設というか、宇宙に関する博物館のような場所があります。僕は行っていないのですが、他の日本の参加者の方はケネディ宇宙センターに行ってきました。あとはディズニーワールドがあります。僕はディズニーよりもユニバーサルの方が好きなのですが、オーランドにはユニバーサル・スタジオ・フロリダもあります。

     


 今回、僕がWFHの世界大会に参加した理由は、日本の青年患者の患者活動を活発にしたいという思いがあったからです。日本はやはりすごく贅沢な国です。僕が今回WFHの世界大会に参加して思い知らされたのは、世界の患者さんの実情についてです。知識としては前々から知ってはいたのですが、やはり実際に体験してみると凄まじいものでした。僕はお隣の中国の青年患者さんと今回すごく仲良くしていたのですが、彼の場合は重症患者ですが、経済的理由で月に1回しか製剤投与ができないそうです。出血などの緊急時には打つとは言っていましたが、定期投与としては月に1回と言っていました。
 
なぜかというと、中国は患者が製剤を買わなければいけないからです。日本は保険制度が整っていて、一応お金を払わなくても患者は製剤を使うことができますが、同じようにお金を払わずに製剤を使うことができる国のほとんどは先進国です。そんな世界の状況の中で、日本では患者は病院でお金を払わずに製剤をもらうことができ、自己注射ができるようになって定期投与で自己管理ができるようになったら、それこそ普段の生活に支障がなくなります。極端なことを言うと、「血友病は注射を打っていれば終わり」というような状況が日本にはできてしまっているのではないかと僕は思います。
 
中学生や高校生、大学生ぐらいになって、学校の勉強やクラブ、バイトなどで忙しくなってくると、こうした2年に1回の友の会の合宿にも参加しなくなってしまったりして、「患者活動はする必要があるのか」と感じてしまう若い患者さんもいるのではないかと思います。実際今回もあまり若い患者さんが参加してくれていないことを思うと、僕は疑問を抱かずにはいられません。一方、世界では一部の青年患者の活動が近年すごく活発になっています。だから「日本でもやろうではないか」、「やりたいな」と僕は思っています。

 こういった目的で今回WFHの世界大会に参加して、各国の青年患者さんたちと交流させていただき、どうやって患者組織を作ったのか、運営しているのかということを僕は学んできました。僕が参加したユースセッションでは、青年患者さんたちが自分たちでテーマを決めて行いました。例えば、青年患者会を盛り上げるにはどういったイベントを作ればいいのかとか、自分たちの活動を広く知ってもらうためにはどうすればいいのかなど、そういったことに対して自分たちで意見を出し合って話をしました。スライドの写真の真ん中の方はインドの患者さんなのですが、よく見たらどこかで見たことのある顔です。加藤諒という日本の俳優さんにすごく似ています。彼に加藤諒さんの写真を見せたら、「おれの兄弟が日本にいるのか」と言ってみんなで笑っていました。



 「青年患者会の需要」というテーマでは、「何を目的とした集まりなのか」、「果たして本当に必要なことなのか」、「私たちに何ができるのか」ということが話題になりました。まず「何を目的とした集まりなのか」ということですが、みんな自分たちが血友病であるということは当然知っています。そして注射をすれば普段通り、健常者と変わらない生活ができなくはありません。先ほども言ったように、そういったほぼ不満がない生活の中で、こういった患者会活動をすることにどういった意義があるのかということを僕なりに考えました。「なぜ僕たちは自由に製剤が使えるのか」だとか、自分の病気や身体のことを知るだけではなくて、血友病という病気そのものについての知識を得ることがやはり大事なのではないかと僕は思います。
 
日本では今、自分たちで好きな製剤を選んで、好きなように使えます。しかし世界では違います。ある国では入札制度というものがあって、国が「今年はこの製剤を使いますよ」と決めてしまうのです。すると、その国の患者さんはその年はその製剤しか使えません。例えば、国が「この年は製剤A」と決めてしまえば、その国の患者さんはその年は“製剤A “しか使えません。こういった制度にどんなメリットがあるのかと言うと、都市部では専門医がいることによって血友病の治療の仕方についてはものすごく理解が深まっていると思うのですが、田舎というか専門医がいない地域では、身体に見合っていない投与量であったりだとか、正しい定期投与を未だにできていなかったりだとか、そういった問題が日本にもあります。そこで入札制度を行うことによって、専門医がいないような地域にも満遍なく製剤を供給できるというメリットがあると僕は聞きました。では実際に日本の患者である僕たちが、今使っている製剤をやめて、国に「今年はこの製剤を使います」と言われた時に、果たしてそれに納得できるのか、受け入れられるのか、これはすごく難しいことだと思います。
 
先ほど軽く触れた中国の患者さんをはじめとする世界中の多くの国の患者さんは、製剤を使うためにはお金がかかります。ですから中国の患者さんは、出血して連日連続投与しなければいけなくなった時には、すごくお金がかかってしまいます。やはり(血友病の)医療費は国の経済をそれなりに圧迫していると思います。国としては、「頼むから、一部でもいいから負担してくれ」と思っているはずです。医療費が高騰している日本でも、もしかしたら同じようなことが将来起こるかもしれません。実際に、小児慢性特定疾患の医療費助成について、自己負担を求める動きもありました。正直に言えば、日本は今まで自己負担なしできていたのだから、できれば払いたくありません。どこかで妥協点を見つけるにしても、将来国に自己負担を迫られた時に、正しい知識を持っていない状態で果たして僕たちは対処できるのでしょうか?
 
なぜ青年患者がそういった知識を必要とするのかというと、僕たちはこれからを生きていかなければいけないからです。今は先輩患者さんたちが、僕たちが暮らしやすいようにいろいろ国と掛け合ったりして制度を整えてくださっていますが、僕たちが大人になった時には、先輩患者さんたちはもうお爺ちゃんになって、今のような活動からはリタイアされているかもしれません。ですので、先輩患者さんたちがやってきた仕事は、いつかは誰かが引き継がなければいけません。皆さんが必ずやるべきだというような強制的なものではありませんが、誰かがやらなければいけないのだから、誰もがせめて知識ぐらいは得ようという理念で青年患者会の需要があるのではないかと僕は考えました。

     


 「日本の青年患者の青年患者による青年患者のための患者会」、どこかの大統領が言っていたような言葉の使い方ですが、一応こういった趣旨の青年患者会を設立しております。「ユースヘモフィリアッククラブ」といって、日本に昔あった「ヤングヘモフィリアッククラブ」の名前をもじらせていただきました。「ヤング」は「若い」という意味ですが、「ユース」は「青年」という意味です。辞書を引けば「18歳から24歳ぐらいが青年期である」と書いてあります。では、なぜ「青年期」なのかというと、先ほども言った通り、学校が忙しい高校生から大学生ぐらいがちょうど18歳から24歳にあたるわけですが、こういった血友病の勉強をする会や集まりからいちばん遠ざかりやすい年代だと思うからです。その年代だからこそ「さぁ、勉強しようじゃないか」と僕は思います。ただ、堅苦しく勉強しても面白くありません。「何月何日にこの先生をお呼びしているので、みんなで勉強会しましょう」と言っても、やはりそれはさすがにつまらないし、こういったことを「つまらない」と感じてしまうことが「患者会に行くのはもうやめようか」と思う契機になってしまっているのではないでしょうか。事実やはりそういった理由で患者会に参加しなくなってしまった人もいるのではないかと僕は思います。ではどうすればいいのかというと、「遊ぼうよ」ということです。「遊ぶ」とはどうすればいいのか、難しい話になりますが、青年たちだけでどこか遠方で今日のような合宿をすれば面白いのではないかと思います。それこそ、これは近畿だけでやるという話ではなくて、日本全国です。みんなで楽しく日本全国を旅行しながら、友達の輪というか同年代の輪を広げて、将来僕たちが大人になった時に必要となる知識を学んでいくというのが僕の考えです。
 
一応青年患者会は設立しているので第1回目の活動はしているのですが、現状としてメンバーは4人います。第1回目は3人だけの出席だったのですが、みんなでUSJに遊びに行って、これから僕たちはどういった活動をしていくべきなのかといった少し難しい話もしてきました。また、大阪の高槻にある一軒家で簡易合宿をしました。すごく楽しかったです。同年代の方々と血友病についていろいろ話ができるというのは、やはりなかなかない機会です。今日のような夏合宿に来ても、どうしても遊んで終わってしまったりだとか、そういったこともあるのではないかと思うので、自分たちの身体のことについて詳しく話をする機会は貴重でした。
 
この「ユースヘモフィリアッククラブ」はまだ何も活動報告はできていないのですが、フェイスブックに「ユースヘモフィリアッククラブ」のページを作っております。まだまだ何も書けていないので検索ワードで上の方に上がってきていないのですが、これからどういった活動をしていくのか、どういったイベントをしていくのか、イベントが終わった後にはそのレポートなどをフェイスブックに載せていきたいと思います。あとは、皆さん登録されているかどうか分からないですが、「ヘモフィリアねっと」にもページを作って、活動報告などいろいろしていきたいと思います。

 今回、僕は勉強をする代わりに無料でアメリカに行かせていただきました。それは24歳以下のユースメンバーに対する奨学金制度を利用させていただいたからです。皆さんももし勉強する気があるのであればこの制度は利用できますが、審査があります。まず日本からの推薦をいただいて、そこから審査でこの制度を受けられるかどうかが決められます。とはいえ、無料で世界に行ける機会だと気楽に考えてしまってもいいかもしれません。ただし、英語を修得したり、血友病に関することなどを学んでおく必要があります。

 



 
スライドの写真で僕の隣にいるのはアメリカ人の女性なのですが、大きいです。僕の方が細すぎるので、おばさんみたいだと言われました。外国の人はやはりみんな大きいです。スライドの写真の彼はイスラエルの方なのですが、身長は190cmぐらいあって、本当に大きかったです。
 
世界では血友病だけではなくて、類縁疾患の活動がすごく盛んになっていました。スライドの写真のこの女性は保因者なのですが、こちらの3人はフォン・ヴィレブランド病という、血が止まりにくい血友病に似た病気です。こういった方々の活動がすごく活発になってきています。日本ではなかなかフォン・ヴィレブランド病はメジャーではないというか、活動的ではないと思っていたのですが、フォン・ヴィレブランド病は発見されていないだけで、検査をしてみるとフォン・ヴィレブランド病であることが分かる人が多いらしいです。ですので、自分の身体を知って活動しようという動きが海外では活発でした。以上です、ありがとうございました。

 

<質疑応答>

若生:
 WFHのユーストレーニングは何人ぐらいで行われたのですか?

早川(祐):
 ユーストレーニングは21ヶ国21人で行われました。応募者50人に対して21人が参加しました。書類審査がありまして、何のためにユーストレーニングを受けたいのかなどを聞かれます。

牛尾:
 兵庫医大の小児科外来で看護師をしております牛尾といいます。貴重なお話、ありがとうございました。本当に新鮮な気持ちで聞かせていただきました。今の若い世代の親御さんたちは、先人の方たちの様々なご苦労があって製剤の費用等々が無料で受けられているということを知らずに、あるいは何かで見知っているかもしれないけど意識せずに、無料になるのだったら面倒臭いけど1年に1回特定疾患の書類を出しておこうかという程度の意識の人が非常に多いということを私も感じているのですが、実際に患者さんから見て、今の若い世代の患者さんには高い意識を持っている人が少ないと思われているのか、若い患者さんでも高い意識を持っている人たちはたくさんいると思っておられるのかをお聞きします。

早川(祐):
 どうなのでしょうか。実際にそういう話は聞いたことがないのですが、病気のことは両親に任せっきりだとか、そもそも小児特定慢性疾患の制度を知っているのかどうかというレベルのお子さんもいるのではないかと思います。なぜ僕たちが自由に製剤を使えるのかということを知ることはすごく大事だと思います。それを知らないで、「なぁなぁで」と言っていいのかどうか分からないのですが、そんな状態で自分の身体を治療しているということに関しては、やはり少し疑問を抱かざるを得ません。自分の身体のことさえケアされれば終わるのではなくて、どういった経緯で自分の身体はケアされているのか、他の患者さんはどういうふうにケアしているのか、そういうところに着目してほしいと僕は思います。

牛尾:
 実際に知らなければいけないことも分からずに過ごしている方も多いと思うので、青年部の活動があるということも私たち看護師としてはもっと啓蒙していきたいと思います。どうしても若い患者さんは親御さんの陰に隠れてしまって、本当は同年代の他の患者さんと交流したいと思っている人でも、そういう術を知らない患者さんは実際に多いと思います。今日のお話を聞かせていただいて、もっと看護師サイドで病院から若い年代の患者さんにぜひ紹介させていただきたいと思いました。すごく素敵な活動だと思います。またよろしくお願いします。

早川(祐):
 ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

若生:
 早川さんたちは何年か前からずっと患者会に関わってきてくれています。無理やり引き込んだような印象もあるのですが、どういう感想を持っているのかお聞きしたいと思います。
 
参加するモチベーションはどこにあるのかな?

ユウマ:
 
他の人との情報交流など、いろいろできて良いと思います。
 前に一回参加してできた友達にもう一回会えて遊べるというのはモチベーションになります。

早川(祐):
 僕もそうだったのですが、自分と同じ体質を持った同年代の同志と触れ合えるというのはすごくうれしいことでした。

若生:
 
それには何歳頃気づきましたか?

早川(祐):
 
小学生の頃からです。それこそ2年に1回会うか1年に1回会うかぐらいの頻度ですが、やはり普段の学校での友人とは違う、何か特別な絆で結ばれているような感情をお互いに感じていたのではないかと僕は思います。たまにしか会わないけども、何も言わなくてもどこか信頼できる特別な関係、それがこの会で味わえる醍醐味というか、素敵な出会いなのではないかと僕は思っています。年が若かったらお母さんに連れてこられているという側面もあると思いますが、こうやってたまに同じ体質を持った同志に会うのはうれしいことだと思います。

若生:
 
楽しめる企画も、だいぶご無沙汰しているよね。

早川(祐):
 
そうですね。それこそこの世代は工場見学に行ってもないわけですから、また見に行ってもいいのではないかと思います。クロスエイトの製造工場はなかなか見ていて迫力があります。クロスエイトの工場は血漿から薬をどうやって作っているのかという製造過程を全部見せてくれるので、すごく楽しかったです。

牛尾:
 
今までに関わってきた患者さんのお話を看護師に聞くと、「うちが良ければそれでいい」というか、「うちの子に何もなければそれで良い」という考えのお母さんが多く、実際に子どもさんが思春期になって自分の将来などを考えた時に、他の自分と同じ病気の人はどうしているのかとか、もっと情報が欲しいと思っている人は実は多いのですが、それを患者さんはどこに言っていいのか分からないのだと思います。お母さんにも言いにくいし・・・と思っている人は実際に多いと思います。その繋ぎ目として青年患者会があるということを紹介できるのは我々医療者だと思うのですが、今はネット社会で若い子ならすぐにアクセスできたりするので、「ちょっとお母さんには内緒でこれ見てみたら?」という感じで紹介できればすごく役立つと思います。お母さんは「うちの子はそんなこと思ってない」、「困っていることなんてないです」みたいな感じになりがちですが、本人の意見をきちんと聞いて尊重してあげたいと思っています。

早川(祐):
 
そうですね。お母さんの話が出てきましたが、血友病患者のお母さんは特別に過保護なのではないかと思います。僕も母が患者会活動をがんばってくれていたおかげでいろいろな知識を得られて、自分ががんばろうとする動力源になったというところがあるのですが、母親は子どもに考える余地を与えてあげるべきというか、子どもに自分の病気について今一度考える機会を与えてあげることはすごく大事なことではないかと思っています。

牛尾:
 
今日ここに来てくれている子どもさんはすごく自己意識が高いです。偉いね(笑)。

佐野:
 
WFHの世界大会のようなところに行くとつくづく思うのですが、血友病とは人種であって民族なのです。血友病に代表されるいわゆる凝固因子障害という人種であって民族なのです。そういう人たちが集まってくるのがWFHの世界大会であるという感じです。そして、皆さんあまり「僕たちは病気なので・・・」という後ろ向きの考えがありません。そういうところは非常に面白かったです。

牛尾:
 今の若い子
にもクローズにしないでオープンにして考えてもらいたいなと思います。

会場:
 
ユースの患者会を立ち上げられて、これから活動をいろいろ模索していくということでしたが、父親の視点でお話を聞いていてひとつ思ったことがあります。息子はまだ小学1年生で、注射はしているので多少は自分の病気について意識しているのでしょうが、まだそこまであまり意識していないと思います。息子には自分のやりたいようにさせてあげたいと、スポーツもいろいろ活発にやらせています。ただ、あと何年か経ったらおそらく壁に当たると思うのです。やりたいけど、ここでやり過ぎたら痛くなるとか、痛くなるのではないかとか、そういったことに直面すると思います。実際そうなった時には、親としては子どもの気持ちを尊重したいのですが、一方であまりやらせ過ぎると「どこか動かなくなるのではないか」と思ったりもします。ですので、そういった時に例えば先輩であるユースの会の方が小学生向けに相談会のようなものを開いて、「壁にぶち当たった時に、自分たちは経験上こんなふうにしてきたよ」といった話をそういうタイミングでしてもらえたらありがたいと親の希望として思います。

早川(祐):
 
医療が進歩したおかげなのかもしれませんが、僕たちの世代と今の小さい子どもさんの世代ではやはり環境が全然違います。今の子どもたちは本当に何でもできてしまうのです。僕が小学生の時はまだ体育の授業ですら少し制限していた時代なのですが、今の子どもたちは、体育はもちろんのこと激しいクラブ活動もできてしまいます。東京の患者会のお子さんですと、ボクシングをやっていたりとか、ラグビーをやっていたりとか、登山をしているとか、すごく活発的な子どもさんもいらっしゃいます。一昔前の「血友病の患者がそんなことをするのは危ない」、「水泳ぐらいがいちばんいいのではないか」などと言っていた時代に比べると、すごく進歩してきたと思います。今回のWFHの世界大会には、エベレストに登頂されたというアメリカの患者さんがいて驚きました。血友病患者がエベレストに登頂するなんて信じられません。本当にビックリしました。

会場:
 
それぐらいいろいろな制限がもうなくなってきているということですね。ぜひ息子も大きくなるにつれていろいろな壁に当たるかもしれませんので、その時はまたいろいろとアドバイスをお願いします。

早川(祐):
 
まだ自己注射をするには年が若すぎますね。オーストラリアでは5歳から自己注射を始めている子がいるらしいです。オーストラリアにアンドリュー・セルバッジさんという患者さんがいるのですが、その方は現在もインヒビターを持っていて、10代まではずっと車いす生活をしていらっしゃった方です。車いす生活なので当然身体も太ってしまい、インヒビターもあって、出血傾向もすごくて、関節もボロボロという方だったのですが、ある日「僕はこのままだったらダメだ」と意識してトレーニングを始め、今はライザップ並みのムキムキの身体に変身されました。そして車いすもやめて、普通に自分で歩けるようになっています。この方は「出血しないための身体作り」を提唱されていました。