「女の子のための勉強会」 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

「女の子のための勉強会」

夏合宿2016報告 その2〈2日目〉

「女の子のための勉強会」

ファシリテータ:大阪医療センター 西田 恭治 医師
日 時:8月7日(日)9:00-11:00
場 所:あたらし屋、215号室


 (夏合宿1日目の西田医師のお話でも紹介されていた、ヘモフィリアねっとのコンテンツ『私と私の遺伝子—若い血友病キャリアの皆さんへ』(制作・カナダ血友病協会、日本語版作成・ヘモフィリア友の会全国ネットワーク)をみんなで集まって実際に観てみることにし、そのあとディスカッションを行いました。
『私と私の遺伝子』を観ていただいてからこの記事を読むと、理解がより深まると思いますので、ぜひ参照してください。) 動画をみる

 



西田:
 動画の感想はいかがでしょうか?難しかったですか?
 この動画の設定としては、実写の女性が推定保因者で、絵で表現されている女性は確定保因者です。この2人がお話をしていく過程で、保因者とはどういうものかを習得していく30分足らずのアニメーションです。非常に内容は秀逸ですので、これを見ることによって多くの疑問を解決していただけると期待しています。2年前にこの動画を日本語化する許可をカナダの血友病協会から得ました。日本語化は、本当は吹き替えでやりたかったのですが、吹き替えでやるとコストがかかってしまいます。一方、字幕ならコストは一銭もかからないということで、とりあえず字幕で日本語に置き換えました。このアニメで分かりにくかったところはありましたか?30分は長いですか?

子:飽きずに見れました。

西田:
 この主人公は推定保因者なのですが、知識が全くない女の子という設定です。これは多くの日本の推定保因者の方も同様だと思います。実際に彼女たちに来てもらうと、ほとんどのことをご存じありません。自分の兄弟が血友病AかBかということも分かっていない方が多いです。「AとかBなんてあるの?」とか、あるいは「それは血液型?」と言われることもままあります。ですから、個々の保因者の方によって認識の程度には非常に差があるのが現実だと思います。彼女たちがどの程度のことをご存知なのかをまず探ることから保因者の健診はスタートするのですが、それ以前に、病院に来ていただく前に、パンフレットやこういうアニメなどである程度の基礎的な知識を把握しておいていただくと、その後の流れが非常にスムーズになります。また、どういうことが分かりにくいのか、どういうことが疑問なのかが明確になってから病院へ来ていただけるので、非常に話が進みやすいと思います。
 多くの保因者の方にとって、今までこういった知識を得る機会はありませんでした。あるとすれば、ネットで自分の兄弟やお父さんの病気のことを調べてみることも可能なのですが、なかなかネットの情報では不行き届きなことも多いです。例えば、今年来られたある保因者の方は、「ネットで病気のことを調べてみようと思ったけど、見ていたら嫌になった」とおっしゃっていました。何が嫌だったのかと聞けば、ネットで検索しても自分の知りたいことが出てくるのではなくて、昔のいろいろな問題、例えばHIVやC型肝炎に関する問題などが検索の上位にズラッと来ているので、もう見るのが嫌になったとおっしゃっていました。ですから、ネットでは適切な情報が知りたい人にはなかなか届きにくいことがあろうかと思います。

早川(母):女の子たちに質問します。保因者って何か知っていますか?

子:血友病の女の人。

子:血友病のお母さんとか妹とか。

会場:血友病の男の子がいるお母さんは保因者の可能性があります。

早川(母):可能性って分かりますか?そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないことです。

会場:
 この中で、お兄ちゃんが血友病の人はいますか?弟さんが血友病の人はいますか?お父さんが血友病の人はいますか?
 
血友病の人が家族の中にいることを、お兄ちゃん、弟さん、お父さんという形で今聞かせてもらいましたが、この中にはいわゆる確定保因者、つまり保因者と決まっている人と、推定保因者といって、保因者かもしれない人がいます。お父さんが血友病の方は確定保因者ですので、その方がもし男の子を産むと、その子は血友病の患者さんである可能性があります。兄弟が血友病であったりする方は推定保因者と言われますが、その時点ではまだ保因者かどうかは分かりません。
 昨日の西田先生のお話の中で保因者診断という言葉が出てきたと思うのですが、保因者かどうかをまずは診断していただくのが保因者診断です。昨日の西田先生のお話の中で、保因者健診がなぜ必要なのか、それにはどういった意味があるのかというお話があったと思うのですが、それは遺伝という、将来女性が子どもを産む時に非常に大きく関わってくる問題があるからです。その時にいろいろと困った状況にならないように、ある程度自分が保因者かどうか分かっておくと、もし赤ちゃんを産む時に起こらなくていい事故を防ぐことができます。また、万が一自分が大きな手術を受けたり大きな交通事故などに遭って、たくさん出血してしまった時の対応が早くできるというメリットもあります。その中で、また違う観点からこのアニメーションを見ると、保因者とはこういうものだということが分かると思います。

早川(母):
 何か自分たちに関わりのあることだとは分かったと思います。大きなお姉ちゃんたちは今までに何回かこういうことを聞いてきたと思いますが、聞いてきた中で何か気になったことや、自分に関わることで、例えば検査していた方がきっとこういう時に良いと思うことを実際に感じたことはありますか?○○ちゃんは検査をしたことがありますか?

子:はい。

早川(母):
 
検査をしてみて実際に何かが分かったと思います。自分自身、先生の話を聞いて、実際に血を採ってみて、何かが分かって、良かったと思うことは何かありますか?

子:
 
万が一大きな怪我をした時に血が止まりにくいことを自分で伝えられたら、お医者さんもそういった対応をしてくれると思いますし、もし自分が子どもを産むとなったら、保因者なので器械分娩をしないでほしいと産科のお医者さんに伝えることによって、子どもを頭蓋内出血から守れたりするので、自分がどんなものを持っているのか知ることは良いことだと思います。

早川(母):今のお姉ちゃんの話は分かりましたか?

子:なんとなく。

早川(母):ちょっと難しかったかな。

【動画鑑賞】動画を見る


西田:
 
本当によくできた動画だと思います。またそれぞれの友の会で、あるいはご自身の知り合いに該当者がいれば、こういうものがあると教えてあげてほしいと思います。内容もあまり暗くなくて、よくまとまっていると思うのですが、やはり吹き替えの方がいいですね。

会場:小さい子どもたちには読めない漢字や少し難しい言葉があったりしますね。

早川(母):
 2段階あればいちばんいいですね。20分ぐらいで、もっと平易な言葉を使った中学に入るまでのお子さん向けみたいなものもあればいいと思います。今のものだと、中学に入ったぐらいの子がやっとギリギリ我慢してついていけるかなという感じですね。

会場:
 例えば小学校低学年ぐらいだと、まだ生理のことなどは実感としても知識としてもなかったりします。また、将来子どもを産むことに関しても、「いつかお母さんになるの」くらいの漠然とした感じの年齢層だと思います。ですから、その前段階として、例えば日常生活で青タンが少しできやすいなどという自覚があるのかとか、「保因者にはそういう可能性があるんだよ」みたいなところからのアプローチがあると、「怪我をして擦りむいた時に少し血が止まりにくい気がするのはそのせいかな」といった感じで理解しやすいと思います。そういった取っ掛かりとしてのイージーなものがもう一つ必要ではないでしょうか?

西田:この動画のような思春期の子バージョンとは別の小学生バージョンですね。

会場:
 そういうものがあれば、お母さんも娘に伝えやすいと思います。逆にこの動画は、ボーイフレンドや生理の症状など、親としては言いにくい非常に突っ込んだ内容も伝えているので、改めて本当にすごいなと思いました。

西田:
 本当は吹き替えにしたかったのですが、吹き替えにするとお金がかかるのです。だから、とりあえずは字幕にしたのですが、吹き替えにする際には、ぜひ皆さんボランティアで声優として名乗りを上げてください(笑)。
 この動画の内容に関わらず、何か気がついたことや疑問なことなどはありませんか?

早川(母):
 
小学生の女の子たちに聞きますが、先ほど言われたように、日頃転んでしまった時などに擦りむいて血が出たり打ち身になったりして青タンができやすいと自分で感じたことはありますか?

会場:
 
うちの娘なのですが、鼻血がよく出るのです。やはりなかなか止まりにくい感じがするのですが、そういうところからなんとなくヒントというかきっかけというか、自分はそうなのではないかと小さいお子さんでもやはり感じるところはあると思います。

西田:こういったことはなかなか人と比べにくいと思います。

早川(母):
 
気がつかないというか、それが自分だと思ってしまいますよね。ただ、歯が抜ける時期の歯からの出血は分かりやすいと思います。歯が抜けたら普通の人はもっと早く血が止まると大人になるまで知らなかったということもあります。

 ○○ちゃんは動画を見てどうでしたか?

子:面白かった。

早川(母):
 
何か気になることや、もう少し突っ込んで聞いてみたいことはありますか?お父さんが横にいるので言いづらいかもしれませんね。

西田:
 
保因者健診の時でも、お父さんやお兄ちゃんと一緒にいたら、女の子たちは本当に診察室で話さなくなります。それで、話さなくてもいいのに横のお父さんが全部質問に答えるのです。私はお父さんではなくてお子さんに聞いているのですが、それほどやはり彼女たちは話しにくいようです。ところが、彼女たちに一人で来てもらうとボロボロ本音が出てくるのです。「お父さんの前でこんなことを言ったらお父さんに悪いし・・・」とか「まだボーイフレンドのことをお父さんに言っていないし・・・」といったことがボロボロ出てくるので、2回目以降は必ず一人で来てもらう理由はそこにあります。やはりお父さんと一緒はダメですね。よく分かっていないのに何でも自分で答えてしまいます。それは患者の場合でも同じです。患者の場合でも、本人よりも横にいるお母さんが全部答えてしまいます。

早川(母):あぁ、耳が痛い(笑)。

西田:
 
だから、やはり当事者と話をすることは非常に大切なことです。特にこういった非常にデリケートな話は、さらに親や兄弟に聞かれたくないことがあるのは当然です。

 この動画を日本語化するのに、さらに何を付け加えればいいと思いますか?今の時点でもあまり違和感はないと思ったのですが・・・

早川(母):トピックが全て盛り込まれていて、すごく分かりやすいと思います。

会場:私も自分の娘時代にこれを見たかったぐらいです(笑)。

早川(母):
 
これを見て、初めて先生に「自分のこういったところは関係ありますか?」とか「こういうことがあるのですが、関係ありますか?」と質問ができると思います。この動画はこれからもっと推していかなければいけませんね。

会場:
 
先ほど早川さんが言われたように、「自分がこうだから他人もこんなものなんだろう」と思うことの方がやはり多いと思います。でも、早い段階でこういった知識があれば、「あれ、もしかして私は・・・」みたいなところで先生に質問させてもらって、「それはそんなに心配することはないよ」などと教えていただけるわけなので、やはりそういう情報としては非常に有効だと思いました。

西田:
 
今、我々医療者の中でよく言われているのは、保因者の方の登録です。血友病患者は一応登録して、日本全国には6千数百人の血友病患者がいると把握して厚生労働省に報告しているのですが、保因者の方がいったい何人いるのかは全く分かっていません。ところが、保因者の方も血友病の包括医療の中に組み込まなければいけないという考えが出てくると、やはりその実数は把握しなければいけなくなります。登録されることに関しては、やはり抵抗がありますか?

早川(母):ここは意見が真っ二つに分かれるかもしれませんね。

会場:
どういう形で登録されるのかによると思います。それこそマイナンバーのような形の登録なのか、それとも匿名で、しかるべき機関の人にしか分からないとか、登録の方法によって違ってくると思います。

早川(母):現状、今患者さんはどういう方法で登録をされているのですか?

西田:
 
各医療機関が自分のところにかかっている血友病患者さんの特性、例えば血友病AであるとかBであるとか、それから生年月日ではなくて生年まで、つまり何年生まれなのか、そして居住地、重症・中等症・軽症の別、使っている製剤を報告します。名前は報告していませんので、本人が特定できない形での登録になっています。

早川(母):それはどこで管理されているのですか?

西田:厚生労働省委託事業です。
   (血液凝固異常症全国調査:報告書は公益財団法人エイズ予防財団が発行)

早川(母):
 例えばですが、大きな震災が大阪を中心にあったとして、家が壊れて避難していて製剤を持っていないであろう血友病患者が大阪にはこれぐらいいると分かった時に、このデータを使って製剤を大阪に送り込むなどという対応をしてくれるということですか?

西田:
 いや、そういったことはしてくれないと思います。ただ、患者の数を把握することは大事です。数というのは非常にパワーになります。例えば7000人の患者がこれだけいろいろなことに苦労してがんばっているといったことを行政や世論に持ち掛けることに関しては非常に効力があります。ただ、日本の中では患者ですら6割程度しか登録されていません。実際に日本の人口から換算すると、血友病患者は1万人程度いると思われているのですが、6割しか報告されていません。ましてや保因者になると、いったい血友病患者さんの何倍の数になるのかすら、分かっていません。だいたい一人の患者さんの背景には2~5人の保因者がいるのではないかと推測はされているのですが、実態は全く把握されていないのが現状です。ですから、そういった登録に向けた動きもあるのですが、症候性保因者、つまり症状のある保因者の方が自分に軽症血友病という病名が付いてしまうことを良しとするか、良しとしないかということと同じように、非常にデリケートな問題です。自分のことを血友病と呼んでくれてもいいという人もいるかもしれませんし、自分にそういう病名は付けてほしくないという人もいると思うので、非常にデリケートなところではあります。

早川(母):
 確かに日本ではそういう言われ方をしていないので、海外の方の講演を聞いた時に、「私の娘は軽い血友病です」と言われても、イコール保因者とは一瞬繋がりません。「女性血友病なのかな?」みたいな受け止め方をしてしまうので、日本ではまだ女性血友病と保因者が感覚的にイコールではありません。

会場:
 
保因者はあくまで患者ではないという思いというか認識が良い意味でも悪い意味でもあります。ただ、やはり凝固因子活性の問題もあって、明らかに症状が出てしまう方もいらっしゃるわけで、我々保因者もその辺りの認識をある意味変えていかなければいけないところもあるのかなと思ったりもします。

西田:
 
凝固因子製剤を使わなければいけない場合、私たちは一応血友病と保険病名を付けます。それから保因者健診に来られた方も保険病名は血友病と付けます。そうでないと、来られた保因者の方がⅧ因子活性やⅨ因子活性を測ったりするのに、病名がないと10割負担になってしまいます。病名を付けることによって保険が利用できるわけなので、好むと好まざるとに関わらず、保険病名としては「血友病」と付けてしまいます。

 この中で凝固因子製剤の注射を受けられたことがある方はいらっしゃいますか?まだおられないようですが、保因者イコール軽症血友病という認識が高まると、今後はそのようなことが増えてくるかもしれません。保因者は出血しないという認識が普通であった時代とは違って、保因者の方でも出血はするし、また手術などの時には配慮しなければいけないという認識が今後広がってくると、凝固因子製剤を使う機会も出てくるかもしれません。動画でも叔母さんが言っていましたが、まさしくその通りです。

動画を見る


会場:
 
私はまだ凝固因子活性を測ったことがないのですが、出産の時も出血は少量だったので、凝固因子活性はそんなに低くないのかなと私自身は思っています。

西田:
 
先ほどの動画の叔母さんが言っていたように、将来のために凝固因子の量は測っておいた方がいいと思います。それは万が一のためで、それで今の生活態度が変わってくる問題ではありません。

会場:
 血友病は軽症から重症まで、結構症状や日常生活に幅があると思うのですが、一般的な血友病の説明はどの辺りを対象に作られているのでしょうか。

西田:やはりターゲットになっているのは重症患者です。

会場:やはり重症の方がこういう情報を求めていますからね。

西田:
 しかし、軽症の患者さんがいったいどれだけいらっしゃるのかということは把握できていません。重症の方は出血するので必ず医療機関にかかりますが、軽症の方は登録されている方でも出血することがないので、年に1回特定疾患の更新だけに来るという方もたくさんいます。
 ぜひ皆さんもどんどん横の繋がりで、ネットワークで啓発していってほしいと思います。海外の出血傾向のある女性のネットワークは結構すごいです。どうやってそんなにいろいろな国の人たちを結び付けたのかというと、フェイスブックです。そういう意味合いでは、非常に上手にネットワークを築けています。

早川(母):フェイスブックにはいろいろなことをアクティブに載せていますね。

西田:
 フォン・ヴィレブランド病の方は、自分で自己注射しているところまで載せています。他に何か質問やコメントなどあれば教えてください。動画は難しかったですか?

早川(母):○○ちゃん、どう?難しかった?

子:字が読めなかった。

早川(母):
 字が読めなかったのなら、少し分かりにくかったかな?音声は英語ですしね。でも何か自分に関係があるかもしれないことは分かりましたか?全然分かりませんでしたか?
 まだ3年生だから、少し難しかったみたいですね。

会場:
 ○○ちゃんの弟くんはお家で注射しているの?それはいつも見ていますか?弟くんがお母さんに注射してもらっているところを見て、どう思いましたか?「痛そうだな」とか「私なら注射できるかな」とか、何か思うことはありますか?

西田:なかなか分からないよね。

早川(母):難しいよね。

会場:私の娘は、お兄ちゃんが注射している時に「自分もする」と言いました。

早川(母):うちも言いました。

西田:注射したら元気になると思ったの?(笑)

早川(母):
 いや、仲間外れになっていると思ったようです。うちはお兄ちゃん2人だから、自分だけ注射できないことが仲間外れにされていると感じたみたいです。5歳になったら自分にも定期投与が始まると思っていたようです(笑)。

西田:
 私の娘は4歳なのですが、家で私が自己注射していると、「お父さんはどうして注射するの?」と言います。さすがに4歳には難しいと思って、「それは君と遊ぶためだよ」と言ったら、本当は仕事で出かけるために注射しているのですが、「今日お父さんは私と遊ぶのね」と言われてしまって、これは少し問題だなと思いました(笑)。しかし、こういった場に参加して知らず知らずのうちに馴染んでいってもらうことは非常に良いことですし、入っていきやすいと思います。昨日出した症例のように、結婚をする前に保因者であることを急に打ち明けられるのは最悪です。

早川(母):
 でも、やはり実際怖いですよね。皆さんはどうですか?まだ現実的には考えられないと思いますが、結婚前に相手に打ち明けるのは怖くないですか?私はこういうことは一応経験しましたが、「怖いな」とは思いました。

西田:
私は昨日お父さん方の部屋でお話ししましたが、みんなすごく受け入れているお父さんばかりでした。そういうお父さんだからここに来ているのかもしれませんが、お母さんに対してすごく協力的だし、こういったことは一世代前ではなかなかなかったことです。昔は子どものことは嫁に任せきりだとか、病院へついていくことも稀だったりしましたが、今の世相を反映しています。実際にお父さんも「だって、女性が強くなりましたもん」とおっしゃっていました(笑)。だから、お父さん側の受け入れに関しては、昔とは徐々に変わってきていると思います。

早川(母):
 今回初めて参加された方は、まだお子さんも小さいし、これからだと思いますが、どうでしたか?少し盛りだくさん過ぎて、まだ頭の整理ができていないと思いますが・・・

会場:
 まだ5月に分かったところで、少し落ち着いたら凝固因子活性検査をしないといけないかなと思っています。

西田:
 私が昨日お父さん方の部屋でお話ししてのろけられた方の奥さんですね(笑)。まだ診断がついて3ヶ月とおっしゃっていました。素敵なお父さんだなと思いました。

会場:早い目に受けとかなければいけないかなと思って勉強させてもらいました。

西田:
 そういった検査をいつすればいいのかについては、決まったものはありません。先生によっても捉え方が違うし、思春期や受験前にそういう話をするのは抵抗があるという先生もいらっしゃいます。あるいは子どもに何かトラブルがあった時、例えば手術をしなければいけなくなった時や、小さい子なら歯が抜け変わったりした時に歯医者さんが難渋するかもしれないので、できるだけ早い時期に凝固因子の検査などはしておいた方がいいという考え方もあります。

会場:
 今まさに歯が抜け変わっている時期なのですが、特に問題なくきています。だから、先に私だけでも早めに検査しておいた方がいいでしょうか。

西田:
 いろいろな意味で、検査はしておいた方がいいと私は思います。なぜなら、先ほども言ったように、ご自身が何か大きな病気で手術などをすることがあるかもしれませんし、事故に巻き込まれることもあるかもしれません。あるいは、また出産をされることがあるかもしれません。こういったことを考えると、自分の凝固因子のレベルを知っておくことには何の損もないわけです。

会場:それは今診てもらっている先生にお願いしたらいいですか?

西田:そうですね。できます。

会場:
 息子の注射は近くの総合病院の小児科でやってもらっているのですが、私は月に何回か奈良医大に行っています。この検査は奈良医大でしてもらった方がいいのでしょうか。どこでもいいのですか?

西田:
 凝固因子の活性を測る検査はどこでもできます。最寄りの開業医の先生でもできます。ただ、その出てきた数字の解釈や伝え方は難しいです。例えば、Ⅷ因子活性が90%や100%だった場合に「保因者は凝固因子活性50%以下が普通ですから、あなたは100%あるので保因者ではないです。息子さんは突然変異です」と言ってしまうとまずいことになります。凝固因子活性は非常に個人差があるので、凝固因子活性だけで保因者であるかどうかは言えません。しかし、保因者かどうか断言してしまう先生もいます。こう言われると、「私は保因者ではないんだ。息子は突然変異で、たまたま血友病で生まれただけなんだ」と思ってしまって、次の男の子を生んだらその子も血友病だったということもあり得ます。ですから、出てきた検査結果に関する解釈は、やはり専門医の方が適切かもしれないです。検査自体はどこででもできます。

会場:
 検査は自分の保険になると思うのですが、費用はどのくらいかかりますか?

西田:
 実際に自費で行うことはありません。保険適用になるので3割負担です。それで初診料を含めて5000円以下だと思います。

会場:APTTと第Ⅷ因子と・・・

西田:
 そうですね。それからフォン・ヴィレブランド因子というものも一緒に測ります。昨日お話しした3人のお父さんは、皆さん家族歴はないとおっしゃっていました。血縁者に血友病患者はいないということなのですが、それは孤発例とよばれます。孤発例は多いのですが、突然変異は思いのほか少ないのです。ですから、ただ単に血縁者の中に血友病患者を見つけることができなかっただけであって、本当は血友病の遺伝子を受け継いでおられる可能性が高いです。今の時代は兄弟も少ないし、親戚付き合いも深くないので、例えば自分の又従兄弟辺りに血友病患者がいたとしても容易に見つけることはできません。

会場:
 お爺ちゃんまでは血友病ではないことは分かっているのですが、その前が分かりません。

西田:そこまでさかのぼると分かり難いですね。

会場:
 血友病という病気があることが日本で認識されたのはいつ頃なのですか?例えば祖母の時代に、血が止まりにくかったら血友病なのではないかという知識はあったのでしょうか。

西田:
 血友病AとBが区別できるようになったのも、検査ができるようになったのも1950年代です。ただ、そういった血が止まりにくい病気があるということは紀元2世紀ごろにはわかっていました。国によっては、男の子が生まれるとおちんちんの余分な皮を切る割礼という儀式を行っているところがあるのですが、そこで前の男の子が割礼で血が止まらなくて死んでしまったら、その後の男の子は割礼をしなくてもいいという決まりがあったりしていたので、認識はずっと古くからあります。私が先月オーランドでのWFH世界大会で驚いたのは、今でもアフリカでは血友病の患者が割礼で頻繁に亡くなっているらしいのです。だから、2000年経ってもあまり変わっていないということです。

早川(母):アフリカではそういう情報が届いていないということですか?

西田:そういう認識が行き届いていないのだと思います。

会場:
 50~60年前だったら兄弟がたくさんいて、小さな時に血友病と分からずに亡くなったケースがあるので、家族歴で分かるのは少し難しいのではないかと思います。

西田:
 上の世代はそうかもしれませんが、横に辿ると分かりやすいかもしれません。例えば、またいとこや、はとこなどですが、付き合いは乏しいですよね。

会場:
 お盆やお正月に一つの家にみんなで集まることも最近はなかなかないですよね。

西田:
 ですので、残念ながら突然変異は実のところは少ないということになります。私はまだ当分大阪医療センターにいると思いますので、また何かあれば、いつでも連絡してくださって結構です。よろしくお願いします。

会場:ありがとうございました。