みんなのくるま2005 参加報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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みんなのくるま2005 参加報告

みんなのくるま2005 参加報告
-第5回福祉車両の普及推進と運転環境改善のための集い-


(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 事務局 鵜川圭吾)

みんなのくるま2005
日時:2005年6月5日 10:00~16:00
会場:別府リハビリテーションセンター
主催:財団法人いしずえ(サリドマイド福祉センター)
協力:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 他

本イベントのチラシは こちら
 
 今回の「みんなのくるま」は初めて九州で行われました。イベント当日は梅雨にはいる直前で、天気が気になりましたが、晴天に恵まれました。また、会場の周りには自然がいっぱいで、次回はぜひ仕事ではなく、私用で来たいなと思いました。
 
 さて、以下に今回の「みんなのくるま2005」の報告を述べさせて頂きます。

 第1部:講演・パネルディスカッション

 講演会ではまず、身体に障害を持っている方で実際に車に乗っている4名のドライバーから、免許取得時・車に乗ること自体についての体験談が話されました。以下に体験談から得られた、様々な問題点、改善点等を述べていきたいと思います。

 免許取得に際しては、まずは自分が運転できる車体を用意することから始まります。免許が取れるかどうかは分からない上に、車体本体の費用に改造費(障害の程度にもよりますが、改造費用が車体本体価格を上回る場合もある)もかかるため、経済的にも精神的にも負担は大きいものとなっています。改造費の公的補助等はあるのですが、地域によって格差があり(最大でも10数万円程度)、自操型福祉車両が普及しない要因にもなっています。付け加えると、上記の資金的理由によって、2台目、3台目へと乗り換えることに躊躇してしまう人もいるようです。

 運転教習に関しては、運転手の障害の程度はもちろんの事ながら、半年も車椅子を車両に積み込む練習をされた方がいたように、車に乗ること以外にも訓練を積む必要があることも示唆されました。障害があるということは、欠損・硬縮等の目に見える制限だけでなく、体全体に及ぼす影響も見逃すことができない問題と感じられました。しかし、障害のある方の免許取得が多少は浸透してきためか、教習所サイドにも配慮等(簡易な運転補助具の教習者への設置、シミュレーション等教習に関する工夫)がなされているところもあることが報告されました。

 もちろん、車に乗ることへのメリットも多く報告されました。まず、どこでも移動できる自由度が増すことが挙げられます。「いつもは乗せてもらう立場が乗せてあげる立場になった」、「車に乗ってしまえば、他の車と同等に走れる」など、障害によって生じる受け身的な立場から能動的な主体になれる一つの可能性であることが感じられました。また、個人個人の特性に合わせて制作される自操型福祉車両は、最もバリアフリーが進んだ分野であるとの評価をされている方もいました。

 また、健常者にも便利な機能(キーレスエントリー、ETC、ハッチバック等)は障害のある人にも便利であるとの示唆的な意見が出されました。今後はユニバーサルデザインの普及が自繰型福祉車両と一般の車との差違を狭め、「みんな」にとって乗りやすい車がスタンダードになることが今後の車の行く末となることに期待を寄せます。

 今回の講演会では、「特装の現場」という題で、障害を持つ人が運転し始めた成り立ちや架装メーカー(障害に合わせて、車を改造するメーカー)のレポートなどがビデオ上映されました。

 その中には交通事故で両足を失ったが、再び免許を取得し、全国的にその普及を広めた藤森善一氏が紹介されました。1960年前後に道路交通法が改正され障害者に免許をとる道が開かれた時代でした。移動手段がないために、福祉や家族に頼って、肩身の狭い思いをしている障害を持つ人を元気づけるために、藤森氏は車で全国行脚したそうです。その中で、移動手段がないために学校にも行けず、肩身の狭い思いをしている当事者に出会い、障害を持つ人を対象とした教習所を設立しました。この教習所が、障害を持つ人にとって初めて運転する路が開かれた瞬間だと言われています。その状況は改善されてはいますが、依然として移動手段ひいては移動の制限により、活動の制約を感じている当事者は多いと思います。アクセシブルに注目し、その道を切り開いた藤森氏には先見の明があったといえるでしょう。

 次に架装メーカー、前述の藤森氏が立ち上げた「フジオート」、それからニッシン自動車が紹介されました。架装メーカーには月200、300件の依頼がありますが、製作困難で依頼を断ることはほとんどはないそうです。注文を受けてから、一つ一つ設計図を作り、型作り等をオーダーメイドで仕上げる様には、職人技を感じざるを得ませんでした。また、この業界において積み重ねられてきた豊富な経験があり、適切なアドバイザーとしての機能も担っているようです。

架装メーカー(車椅子収納の機器)

        パネルディスカッション

 講演の最後には、当事者、また技術職(二輪車)の方をパネラーに迎え、パネルディスカッション「福祉車両の普及を阻むもの」が行われました。現状の問題点、そして海外の事例等が出され、検証軸の豊富なディスカッションとなりました。

 4年前(2001年)に、道路交通法の欠格事項が廃止され、どのような障害のある人にも免許をとるチャンスが与えられました。しかしながら、免許センターの適性試験を通るのに2年待たされた方や、前例がないとの理由で断られるなど、障害を持つ人が免許取得のために権利を強く主張しなければいけない状況は未だにあります。適性検査が障害者にとって足きりになっている制度設計が修正されると共に、どのような設備、能力が付加されれば運転できるかを当事者と共に検討する機関が必要であることが示唆されました1)

 スウェーデンの事例では、車の改造に対する基準は日本ほど厳しくなく、日本には見られない改造(車から車椅子用のスロープが出る仕組み、車椅子が乗りやすくするためにタイヤの空気圧が下がる仕組み等)が見られました。

 二輪車については、片手でも運転できる二輪車が紹介されました。改造の部品自体には大した費用がかからないのですが、そのための研究費、工賃が多くかかり、採算があわないこともあるそうです。二輪車に関しては、四輪に比べて、個人ベースで改造しているように感じられました。


1)・・・アメリカ合衆国では適性検査はなく、障害を持っている人が免許を取得する際には、就職することを前提として、政府から委託された評価機関がその人を適正に評価し、車の補助装置を選定、資金補助をするという仕組みが紹介された。

 第2部:福祉車両の展示・説明と同乗見学

 以下に自動車メーカー・架装メーカーの改造の特徴を示していきます。時間的な制約もあり、すべてを網羅しきれていないことをご了承下さい。

ホンダ(車種:フィット)

【足動車(下肢でほとんどの運転を行う車)】
 左足でハンドル、右足でアクセル・ブレーキで、改造費は100~150万円。オーダーメイドで個人個人の残存機能を考えて、制作されています。

ダイハツ(車種:ミラ・セルフマティック)

【車椅子に乗りながら乗り込む】
 今年秋に発売予定になっており、200万円ほどを目処に開発中とのことでした。車椅子に乗ったまま、運転席に乗り込むことが出来ます。ただし、「自宅から車中」の設計であり、「車から野外へ」との設計ではありません。ハッチバック、車椅子を収納するスペースがあります。

日産(車種:ティーダ、キューブキュービック)

【アクセルを電子制御】
 パームの上に手首を置き、手首をひねるだけでアクセル操作ができます。シートにはアームレストがついていて、アクセルを踏むときにだけは伸ばすというように運転に際して負担が少ない設計になっています。

【チェアクレーンで力をかけずに車椅子を収納】
 キューブには車椅子を左後ろの後部座席に手で持ち上げずに済むという、ルーフにクレーンがついていて、後部座席に車椅子を収納できます。40万円強の費用設定で、フラットシートもあります。

ジョイスティックカー

【すべて手元で作動できる車】
 手元のスイッチでドアの開け閉めができ、車椅子用のスロープは自動で出る仕掛けがついていました。6つのボタンの組み合わせ操作でエンジン、サイドブレーキ、ブレーキ等を行います。運転はジョイスティックで操作を行います。運転位置までつくと、固定レバーがでます。

バイク

【片手用で運転ができる二輪車】
 アクセル・フロントブレーキを左手のサイドに集約する。上記の機能を集約するだけなら車検には問題ありません。幅、高さが変われば変更申請が必要です。慣れるまでには時間がかかるが、若干右回りの小技が少し難しいものがあるとのコメントがありました。義手の右手は添えているだけで意味があります。

フジオート(架装メーカー)

【車種はあまり問題ない手動装置】
 アクセル・ブレーキは上に跳ね上げる機能で、足の可動域が制限されている方でも運転可能な設計にしています。
 車椅子用装置(ブレーキ・アクセル・ウィンカー・フォン等)を手元ですべて行う装置が下の写真です。

トヨタ(ラウム)

【手動運転、車椅子の収納を考慮した車両】
 後部座席のレール、しっかり在位を保持できるシート(猫背に合わせられる)が特徴です。グリップを引いてアクセル(微妙な調節)、ハンドル(すえぎり状態で片手で簡単に回せる)があります。

 所感

 車に関しては、乗り込むことが主な中心となっており、そこからの移動の段階には至ってはいないようでした。また、雨天時の問題(主に乗り降りの際)はどこのメーカーも手つかずの問題であるとも聞きました。だからこそ、まだまだ発展途上であり、発展する可能性が多い分野であることも感じさせられました。

 会場内で、業者の方が「普通のモーターショウで、このような機能オプションとして普通に紹介されるようになれば、もっと普及が進むのに…」と漏らしていたことが印象に残っています。

 私たちは車を含めて、多くの道具、機器に頼り、生活を営んでいます。それは昔から延々と「みんな」にとって便利な機能を、「みんな」で追究した結果だと思います。しかしながら、特別にこのような企画を催さなければいけない現状自体が、福祉車両が「特別」な人にとって必要なモノであるという現状を物語っていると言えるでしょう。私たちの周り、そして未だ見ぬ誰かの生活上の困難さを想像し、「みんな」の枠を広げることが今後の共生にとって不可欠であることを認識しました。

 福祉車両の普及がすすみ、より多くの人が車を楽しめるように微力ながら、声を上げていきたいと思います。