薬害根絶デー2004 報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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薬害根絶デー2004 報告

薬害根絶デーとは?

 薬害エイズ訴訟和解後、1999年8月24日に厚生省前に薬害再発防止をうたった「誓いの碑」が建立されました。その後、毎年8月24日を「薬害根絶デー」と位置づけ、各地で集会や行政への要請活動が行われています。また、1999年10月に全国薬害被害者団体連絡協議会(以下、薬被連)が発足され、同団体が毎年8月、中央省庁への要請行動をしています。薬被連主催の2003年度薬害根絶デーは、文部科学省協議、厚生労働省協議(協議内容は薬被連HP参照) に加えて、薬害肝炎原告団の要求運動、要望書提出が並行して行われました。また、2002年は坂口厚生労働大臣が4回目の薬害根絶デーにおいて初めて出席されまして、マスコミその他、多くの人の注目を集めるに至りました。今年(2004年)も肝炎の要望書を提出することになっています。

2004薬害根絶デー
日程:2004年8月25日(火曜)
主催:全国薬害被害者団体連絡協議会
会場:下図タイムテーブル参照


参考資料

 薬害根絶デー報告Ⅰ

(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 事務局 鵜川圭吾)

リレートーク

リレートーク (街宣車の上で発言する薬害肝炎訴訟原告の山口美智子氏)

 今年(2004年)の薬害根絶デーのリレートークは、薬害肝炎訴訟の弁護士である福知弁護士から始まりました。「この日を薬害防止のために何が出来るか、皆で考える契機にする」という内容が力強く述べられました。厚生労働省前には、薬害肝炎訴訟の支援の学生達を中心に全体で80名ほどの人数が集まりました。

 福知弁護士に続き、大阪、名古屋、福岡から来られた各地の薬害肝炎の原告が、今までの沈黙を破るかのように、厚生労働省に向かって自分たちの思いを叫んでいました。薬害肝炎訴訟の原告団は40代~50代の母親が多く、「子ども達の代にまで薬害を残して欲しくない」という言葉には心を打たれました。薬害防止に積極的に関与されておられる議員さんや薬害被害者の方々、肝臓病患者会の方の発言が後に続きました。その中で2点ほど印象に残る発言がありました。

 一つは薬害に対する国の態度への批判(「血液行政の負の遺産の精算をすべきである」「臭いものにはフタをする体質を改善すべきである」等)でありました。何も薬害肝炎のみに限ったことではなく、薬害の救済はなぜ裁判にまでもつれ込むのか、裁判を起こしてまで訴える被害には何かしら国や企業の責任が伴うだろうと感じます(国が「薬害」として認める、認めないにもかかわらず)。けれども、上記のように、今までの薬害訴訟の大半は裁判の終結に至るまで、国は被害者の主張を受け入れようとする態度をまったく見せません。裁判の場であれ、何の場であれ、薬剤の承認をした国はまず被害者が納得する説明責任を自発的に果たすべきであり、被害者が生命の危機に瀕すると予見できるならば、人道的に救済すべきであると思います。積極的に事態の収拾をはかろうとしない国の態度に憤りを感じざるをえません。

 もう一点は、リレートークの後半にイレッサ薬害の被害者の方が発言されていたことです。これまでの薬害事件で被害者の声を発端として、薬事法改正(承認制度の見直し、再審査制度、再評価制度等)の様々な薬害・副作用被害拡大防止の方策がとられ、行政も過去の数々の過ちを経験していると思われます。

 しかし、2002年7月に承認されたイレッサが多くの重篤な副作用を発生させ、納得のできない被害者が裁判を提訴し、この薬害根絶デーで被害を訴えている様子を見ると「不合理な理由による薬の被害者は後を絶たない」ということを実感しました。

碑の前 要望書提出

碑の前 要望書提出(左から、薬害肝炎原告の山口美智子氏、薬被連代表世話人の花井十伍氏、坂口力・厚生労働大臣)

 今年も坂口厚生労働大臣が碑の前に来られて、薬被連の要望書を渡すセレモニーが行われました。碑の前には多数の報道陣が集まり、それを囲い込むほどの人が厚生労働省の碑の前に集結しました。薬被連の代表世話人である花井氏が薬被連の要望書を読み上げ、提出しました。それに引き続き薬害肝炎訴訟の原告からフィブリノゲン納入医療機関を求める署名の束が手渡されました。

 その後の坂口厚生労働大臣からの挨拶(後掲)はその場にいた観衆に印象深いものになったと思います。端的に言えば、「副作用などの被害に対して事後処理型の対応ではなくて、早期に疾病から副作用被害ではないかと予測をつけて対応する」ことが述べられました。

 私が思うには、何かしら甚大な被害が広く世に露呈しなければ行政はできず、科学的に確定的でないと対応したくないという体質を自発的に改善しようとする意気込みとして、今回の大臣の発言は一定の評価はできるものとして受け止めました。今後は、この動きが後退しないように市井の人々による監視が必要不可欠であると思われます。

<要望書提出後の坂口厚生大臣あいさつ>
 今日は誓いの碑ができましてから、丸5年という歳月を迎えた訳でございます。今日は多くの皆様方が全国からお集まりをいただきました。皆様方の運動に敬意を表したいと思います。
 HIV感染のように重篤な障害が医薬品から起こらないように、二度とこういうことを繰り返さないようにということが、この誓いの碑を作った趣旨であったと思います。厚生労働省の職員、あるいはまた、文部科学省の職員は、この碑に刻まれました言葉を胸に秘めながら、日々の仕事をしなければならないと考えておる次第でございます。今回、薬の副作用につきまして、今まで薬の副作用が起きましてから対応するという、副作用を中心にして事後処理型でやってきた訳でございますが、ここを、一歩考え方を改めまして、起こりやすい疾病、肝炎でありますとか、その他起こりやすい疾病を、今度は中心にしまして、疾病の側から見て、この病気が起こったら、それは薬剤による副作用を含めて、そういうことがないかといったことを見ていく。主な病気を幾つか挙げまして、具体的なその症状を、特に早期の症状を明確にして、そして、もしも(健康被害が)起こりました時には、早く気がつくように、そうした疾病を中心にして、そこから副作用を見直すという、新しい立場を作り上げていきたいと考えているところでございまして、今回そのことに着手をしたところでございます。早くその体制を整えまして、専門家の皆さん方にもお入りをいただき、そして疾病の数を次第に増やしていって、この医薬品による副作用というものを予防していく。そういう体制を一日も早く確立をしたい。今までもやっていたわけでございますけれども、それは副作用が起こったことを中心にして、そこから見てきたわけでございますけども、そうではなくて病気の方から見ていくという、そういう立場をこれから作りあげていきたいと考えているところでございます。
 ただいま、(全国薬害被害者団体連絡)協議会の名前におきまして、要望書を頂戴をいたしました。いちいちここでお答えすることはできませんけれども、後刻、担当職員の方から丁寧にご説明を申し上げたいと思っているところでございます。
 今後の皆さん方のご活躍をお祈り申し上げたいと思います。

「全国学生の会」立ち上げ

       学生達が作成したTシャツ

 場所は衆議院第二議員会館に移し、全国の肝炎訴訟を支える全国学生の会の立ち上げが行われました。学生達ほぼ全員が、朝のビラまきから自分たちの作成したTシャツを身にまとって、薬害根絶デーに参加していました。

 まず、最初に民主党の菅直人議員が挨拶に来られ、薬害エイズ事件当時の厚生大臣であったころの経験をもとに学生達に叱咤激励をされました。その他民主党の議員を中心に挨拶が続き、その後学生主催のイベントが行われました。

 まず、5地域(東京・大阪・福岡・名古屋・仙台)の支援の学生から自分の団体の紹介があり、各地域で作成されたキルトをつなぎ合わせたり、クイズや寸劇などの各地の出し物、全国学生の会の声明文が読み上げられるなど学生の若い力をひしひしと感じられました。各地域で様々に学生団体の規模や持ち味の違いはありましたが、薬害肝炎の被害の理不尽さ、社会の不合理さを感じていることが伝わりました。

 その中でも印象に残ったのは、福岡の学生の会による詩の朗読でした。その中に学生達と同じTシャツを着て、共に活動している福岡訴訟原告の福田さん、小林さんの姿がありました。お二人は実名公表をしています。福岡の出し物の中で、同世代の原告と支援の学生達が、立場の垣根なく一緒に協働する姿に感動しました。

 このように地域の学生支援の輪が集まり、有機的につながり支援を強化していく試みはとても画期的で、今後の世論喚起に必ずや大きな影響を与えていくと思いました。

「全国学生の会」立ち上げ(全国各地のキルト)

薬害対策弁護士交流会

      薬害対策弁護士交流会

 これまでの薬害訴訟に携わってこられた弁護士が集まり、連携して活動していく目的で、「全国薬害問題対策弁護士連絡会(略称「薬害弁連」)」が発足しました。その立ち上げとして、薬害根絶デーに交流会が開かれました。「薬害弁連」の役割として「訴訟」「恒久対策」「薬害再発防止」の3つのキーワードが示され、意見交換がなされました。

 あいさつで鈴木利廣弁護士は「訴訟だけが弁護士の役割なのか、訴訟が終結してからの被害者救済、薬害の再発防止等により積極的に関わっていく必要があるのではないか」という内容が述べられました。

 その後、各事件の「訴訟」「恒久対策」「薬害防止」に関して、それぞれの事件に携わってこられた弁護士による報告が行われました。「各弁護士5分」と設定されていたにもかかわらず、ほとんどの弁護士が5分を優に越えて報告していました。それほど、それぞれの薬害訴訟は端的に表すことの出来ないものであると同時に、携わってこられた弁護士の方々の思い入れが強いことも感じさせられました。

 各事件の報告後は、薬害被害者から「全国薬害被害者団体連絡協議会」、その他で薬害防止活動をしている「薬害オンブズパースン」から活動の報告と問題提起がなされました。内容は活動報告が中心となりましたが、弁護士の「薬害防止活動」への参加、訴訟終結後の被害者との連携の強化が求められました。また、各訴訟での経験を今後の薬害訴訟に活かしていかなければならないなど、弁護士同士の連携の強化も訴えられました。

 今回の交流会は時間の関係で各方面からの報告でほぼ占められましたが、「薬害弁連」の立ち上げが皆に承認され、その在り方、目的、活動等を今後議論していくことが確認されました。

 薬害根絶デー報告Ⅱ

(文責:全国薬害被害者団体連絡協議会 代表世話人 花井十伍)

文部科学省・厚生労働省定期協議報告

 私たち「薬被連」はこれまで5回文部科学省及厚生労働省との協議を行ってきた。特に文部科学省との協議(要望書参照)は、「薬被連」結成時の主に二つの問題意識の共有によるものである。一つは、薬害発生のメカニズムを考える時、医薬品が実際に使用される医療現場の問題を看過することができないとの認識の中で、我が国の医療が文部科学省管轄である大学医学部及びその附属病院を中心に構築されてきたとの問題意識であり、もう一つは、今後子供たちが薬害の被害者にも加害者にさせない為に、薬害事件発生の事実を小学校、中学校、高等学校の教科書に記載されるべきだとの問題意識である。

 第1回目の文部科学省との協議は、国会議員の紹介を要件としたり、録音制限や文書は出さない等の条件を課されるなど、一般の市民感覚から大きくかい離した官僚的対応がなされたばかりではなく、薬害と薬物乱用とを全く混同するなど、私たちを大きく呆れさせた。

 しかしながら、翌年においては前年度の対応に対する謝罪から協議が徐々に正常化し、昨年度からは、協議が課長級となり今年は議員の紹介条件も撤廃されるに至っている。昨年の協議において、国立大学の医学、薬学教育において、薬害問題を被害者の声を聴く授業で教える事を推奨し、専門教育分野における文部科学省の薬害教育に対する姿勢ははっきり積極的になったと評価できるだろう。すでに、「薬被連」からも幾つかの大学に実際に被害者当事者の講師を派遣している。

 一方、小、中、高に関しては、学習指導要領改訂直後から協議が始まった事もあり、めだった進展を見ていない。今年は、担当者も全て変わり、回答も第1回目を彷彿とさせる官僚的ものにとどまった。学習指導要領改訂に向けたさらなる働きかけが必要である。

 厚生労働省との協議は、各団体とも元々それぞれ独自の協議を行っている事もあり、比較的概括的テーマと裁判を行っている団体への応援的協議を行う形式で進めてきた。今年は、前者で一般医薬品の販売形態やそれにかかわる規制緩和を大きなテーマとし、後者は薬害肝炎を取り上げた。

 一般医薬品の販売に関しては、「薬被連」側から、「まず、規制緩和ありきではないのか。」という趣旨の意見が複数出された。この問題については、厚生労働省の審議会でも議論されており、「薬被連」からも委員が参加している。ドラックストア協会など、特に一般用医薬品購入の利便性に固執する意見は、夜間救急医療政策の不備を前提としており本末転倒である、との意見に対して、後日関係各課と調整の上回答される事が約された。

 薬害肝炎についてはフィブリノゲンの納入先医療機関の公表に先立って、可能な病院に対して患者への連絡を促す通知を送付すべき、とする「薬被連」の主張と、あくまで、本年度末公表に向けたスケジュールを堅持する厚生労働省側とが激しく対立した。この件についても後日回答する事でかろうじて決着した。

 文部科学省や厚生労働省といった複数の省庁と協議を重ねる事により、「薬害根絶」実現の為には、より幅広い視点での問題解決が必要である事があきらかとなりつつある。特に、製薬業界は国際的に再編が行われており、科学技術の発展により全く未知のリスクを抱え込んだ医薬品の登場も懸念される。市場優先の政策は原理的に、安全性に関わる部門の監視指導行政の強化とパラレルであるはずである。しかしながら、明らかにその差は広がっており、制度的な改正とは裏腹に、薬害再発のリスクはより大きくなっていると言える。秋の「薬害根絶フォーラム」に向けてより本質的な議論を行ってゆく必要がある。