寄稿 HCV訴訟の現状 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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寄稿 HCV訴訟の現状

HCV訴訟の現状


≪筆者≫ 薬害肝炎訴訟大阪弁護団  青砥 洋司


 昨年(2003年)10月に弁護士になりました青砥洋司です。HCV訴訟の現状について、簡単にご報告させていただきます。

 早期解決を目指して

 HCV訴訟が提起されて、はや1年と9か月が経とうとしている現在、全国5カ所のHCV訴訟弁護団は一致団結して全力で取り組んでいます。HCV訴訟での請求は、原告に対する慰謝料請求ですが、最終目標はHIV訴訟と同じく、治療体制の確立、そして薬害の根絶です。ただ、これらの目標は早期に達成されなければ意味がありません。このことを考えるとき、先日の福岡地裁での期日後、進行協議手続の際に一人の原告さんが発言されたことが思い出されます。それは、以下のような発言でした。突然立ち上がった一人の原告さんの「裁判長、私は原告の一人ですが、発言させていただいてよろしいでしょうか?」という言葉で始まりました。「私はこの裁判を見ていて、本当に前に進んでいるのかと思います。国の代理人の方々もお忙しいでしょうが、でももう少し裁判の進行に協力していただけませんか。代理人の方々も時間がないでしょうが、我々原告も時間がありません。我々原告の時間がないというのは、生きる時間がない人もいるのです。」この発言をきっかけに法廷内の空気が変わったような気がしました。裁判所からも一月に2回期日を入れることも考えるという発言がありました。弁護団としても早期解決の重要性を再確認させられる出来事でした。

 すでに、7月も終わろうとしている現在、「このHCV訴訟を2年で解決する」という目標達成は不可能となりましたが、弁護団でも全国弁護団会議でも訴訟に勝つことだけでなく、いかにして早期解決を目指すか検討しています。

 具体的なスケジュールとしては、ほぼ主張書面の提出・争点の整理を終え、証人尋問も始まっています。九州の衣笠証人・椿証人の主尋問・反対尋問を終え、大阪の飯野証人の主尋問が終わっています。今後も東京のバーカー証人など各地裁で分担して証人尋問を行うことになっています。証人尋問は来年春に終え、証人尋問が終了し次第、原告尋問を開始し、来年夏には結審し、来年の薬害根絶デーには大きなヤマ場が来ることになると思います。

 現在の訴訟の経過

現在の原告の状況

 提訴の時は大阪と東京だけでしたが、その後福岡、名古屋、仙台でそれぞれ訴訟が提起されました。原告数は現在(2004年)大阪で19人、東京で21人、福岡で18人、名古屋で9人、仙台で5人の計72人になりました。全国の弁護団の合計が150人近くいることを考えれば、未だ弁護団の半数で、早く弁護団の数に追いついてもらいたいと思っています。

 しかし、肝炎の患者さんの中には未だ自分が肝炎に罹っていることに気づいておられない方や、分かっていても何時罹ったか分からない方が多いようです。そこで、弁護団では、フィブリノゲン製剤を使用した7004の医療機関を公表して、肝炎検査を呼びかけるよう厚生労働省に要求してきました。関係医療機関から異議が出たため、5月13日には公表されませんでした。弁護団では年末の公表時の原告拡大に向けて準備に入っています。また、署名活動を通じて厚労省へ公表要求も行っております。更に、心ある医療機関からは自主的に公表して頂いたりしています。弁護団としても厚労省頼みでなく、医療機関への自主的公表の要請活動も行っております。

HCV訴訟の証人

 HCV訴訟の争点はほぼ明らかになり、現在訴訟のヤマ場とも言うべき証人尋問に入っています。前述の様に、有効性について福岡の椿証人・衣笠証人が終わり、重篤性については大阪の飯野証人主尋問が終了しています。今後有効性について東京地裁でバーカー証人、第9因子製剤の証人、損害論については仙台地裁で大内証人を予定しています。

 被告国は当初A証人、B証人などとふざけたことを言っていましたが、結局、産科の寺尾証人、重篤性の矢野証人を申請しています。その他、数人の証人を申請すると思います。被告三菱ウェルファーマも一人くらいは証人申請するかもしれません。

 全国弁護団も有効性、重篤性、因果関係などの班をつくって主張してきましたが、今後は各班で証人尋問期日には他の地裁応援に行き、全国一致団結して証人尋問で有利な心証を形成してもらおうと思ってがんばっています。

 HCV裁判の支援の輪と今後の課題

 訴訟の進行は通常の訴訟では考えられないスピードで進行しています。弁護団としても誰もスピードを落とそうとは言いません。いかに早期の解決を図るかしか考えていない状況です。2005年夏には裁判所による判断が下されるのではないかと思います。

 そのような状況で、大阪のHCV裁判を支える支援の輪はどんどん広がっています。支える会の世話人会も月に一度程度開かれ、ニュースレターも2ヶ月に一度くらい発行されています。支える会の会員も2004年7月23日現在489名と500名に手が届く勢いです。

 また、学生の活動も活発で、京大に続き、立命館でも支える会ができました。更に大阪大学でも熱心に傍聴に来てくれる学生がいて、支える会ができるのも時間の問題です。そして、学生も傍聴に来るだけでなく、裁判の日のビラ配り、母の日にビラ配り、裁判の後の報告集会では司会をしたり劇をやったりと非常に積極的です。また、活動は全国の学生の支える会とも連携して全国的な活動となっています。

 その他、医療講演会も順調に行われています。大阪・京都に続き、愛媛・姫路・堺・和泉・滋賀・出雲・倉敷・米子で開催しました。今後も奈良・広島・和歌山と続々と開催予定です。

 しかし、支援の輪を広げることは、弁護団もあまり得意ではありません。この点で支える会世話人会でも、太田さん、若生さん、鵜川さんにいつもお世話になっています。今後ともネットワーク医療と人権の皆さんのご協力無くしては困難だと思います。今後ともご支援よろしくお願いします。

 共に薬害の根絶に向けて闘い、2005年夏にはこのHCV訴訟に勝利しましょう。今後もご支援をお願いします。