7th ICAAP「ユースフォーラム2003 in 神戸」報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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7th ICAAP「ユースフォーラム2003 in 神戸」報告

第7回 アジア太平洋地域エイズ国際会議(7th ICAAP)企画
「ユースフォーラム2003 in 神戸」報告


(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 理事長 若生治友)


 2003年11月、神戸国際会議場において、第7回目となるアジア太平洋地域エイズ国際会議(7th ICAAP)が開催される予定でしたが、世界的に流行したSARSが会議開催時期に再び流行する可能性を否定できないこと、SARS患者を受け入れる医療機関の体制が不十分であることなどから、結果的に7th ICAAPは2005年7月に延期されることになりました。

 しかしながら、7th ICAAPに併せた国内の各種イベントや日本エイズ学会での海外ゲストの講演などは予定通り開催されました。特に若者が中心となったユースフォーラムにおいては、MERSの活動内容紹介を行いました。ユースフォーラムの中心が20代前半の年齢ということもあり、すでにその年齢を通り越している私ではなく、2003年4月からMERSの事務局として働き始めた鵜川圭吾が中心となって、ポスター展示、活動紹介プレゼンテーション等を行いました。

 私は、11月30日に行われた「Bridge the Youth」と題して行われた、さまざまなNGOの若者達が行う活動紹介プレゼンテーションを拝聴したので、簡単ですが報告します。

 全部で13のグループが活動紹介を行っていましたが、北は北海道、南は九州まで全国各地から参加していました。高校生から20代(一応?!)まで、セクシャリティ、ジェンダー、マイノリティ、性感染症など、HIV/AIDSを通して露呈した問題を真剣に考えて啓発活動していることが伝わりました。我が国では若い人のHIV感染が急増しており、感染予防のために、若い人が同世代の若い人たちへメッセージを発信していく重要性は非常に大きいと思います。

 13番目・最後に行われたMERSのプレゼンテーションでは、1980年代にすでに1500名近くのHIV感染者が存在し、それが血液製剤によって感染した人たちであること、また薬害が繰り返し起きていること、エイズに対する差別偏見の始まりが、社会防衛的に対処した行政・マスコミ・社会の責任であること、薬害エイズの反省からエイズ予防法の廃止・感染症新法の制定になったことなど、もう一度若い人たちへ分かって欲しいというメッセージでした。途中、読み間違いを逆に笑いにするなどありましたが、力強く訴えたプレゼンテーションだったと思います。

MERS プレゼンテーション 当日配布資料

 「ユース・フォーラム2003 in 神戸」参加報告

(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 事務局 鵜川圭吾)

第7回 アジア太平洋地域エイズ国際会議(7th ICAAP)企画
「ユースフォーラム2003 in 神戸」

日時:2003年11月29~30日
会場:29日-神戸国際会議場(日本エイズ学会内)、30日-神戸アートビレッジセンター

(29日)国際フォーラム
「アジア・太平洋地域のユースが直面するエイズに関連する議題について講演する国際フォーラム」

        神戸国際会議場

 29日に行われた国際フォーラムは「日本エイズ学会学術集会」のプログラムの一つとして行われた。会場には50人ほど集まり、ゲストスピーカーの話に熱心に耳を傾けていた。ユースフォーラムの実行委員会代表の挨拶に始まり、前半はアジア・太平洋地域(オーストラリア・インドネシア・タイ・日本)のゲストスピーカーの講演、後半は観客の質問を中心にゲストスピーカーによるパネルディスカッションが行われた。

 ユースフォーラムは若者(15歳~25歳)が主体となり、HIV/AIDSについて考え、意見を述べ、そしてネットワークを構築していくことを目的としている。今回は、前回の第6回アジア・太平洋エイズ国際会議(6th ICAAP)ユース・フォーラムの世話人の一人であったアリーシャ・ロス氏(オーストラリア)の挨拶から講演は始まった。ネットワーク構築の重要性、それとともに続けることの重要性が強調された。アリーシャの言う「ネットワーク」は、地域というミニマムな単位から、世界的な規模にいたるまで、様々なレベルでの「つながり」が大切だということを感じさせられた。その後、インドネシア・タイ・日本と続き、ゲストスピーカーによる講演が続いた。

 インドネシアの講演者はゲイコミュニティに対する相談・予防啓発の活動、またタイの講演者は「青少年」をターゲットにネットワークの構築・その広げ方についての講演が続いた。講演の内容を聞き、日本の若者によるHIV/AIDSの予防・啓発のネットワークがいかに未熟であるかを思い知らされた。また、もう一方で各国の思想の違いが感じられた。それは、インドネシアにおいてはイスラム教が主たる宗教であり、タイにおいては父権温情主義的な思想である。それがHIV/AIDS、セクシャリティ、ジェンダーの問題と絡まり、各国様々な様相を呈していること、そしてその様相に対してユースである彼らがアンチテーゼを示し、状況を変容させようとしていると感じられた。各国で活動しているユースの存在を知り、そして彼らの言葉に共感し、そして自分に何が出来るかを考えさせられた。

 日本のユースの講演は、情報を与えるという講演ではなく、考えてもらうということに焦点をおいた講演であった。映像ではスライド(HIV/AIDSに関する)が流れ、その映像とは連動していないような質問群が続くプレゼンテーションだった。その視覚的効果と自己の存在に関わる質問項目を連ねることによって、HIV/AIDSがより身近に感じられた。また、HIV/AIDSという一つの病気が個人の在り方(セクシャリティ、ジェンダー、アイデンティティなど)を揺るがす大きなアクションの一つになっていることを改めて思った。

 各演者の講演には、それぞれテーマとなるキーワードが3つほど設定されていた。司会者が講演の合間に観客に対して謎かけや答えを小出しにすることで観客に興味をもたせ、考えさせ、参加させる工夫は参考になるものだった。

 後半のパネルディスカッションでは、観客からの様々な質問に対して各パネラー(前半に講演した演者)が答える形式で進められた。経験豊富なゲストスピーカーからの返答は実感がこもっており、観客が熱心に耳を傾けていたことが印象に残った。議論にあがったことは様々で、観客が参加しているという雰囲気が出ていた。

 後半のパネルディスカッションにおいて印象に残ったことは、「身近なところで話す」ということだった。家でも、学校でも、バイト先でも、どこでもその話をすること、これが大切なことであるとアリーシャは強調していた。「身近なところで話す」ことは誰にでもできるということである。にもかかわらず、意外にできていないことだと思う。すぐにでも、積極的に自分から動き出せと言われているような気分がした。

(30日)ユースネットワーキング企画 ~ツクル、ツナガル、ツギニイク~
「若者が取り組むエイズ活動の発展、展示、ワークショップなど参加者主体の交流イベント」

【「ワークショップ1/Bridge The Youth」(11:00-13:00)】

       MERSの掲示ポスター

 HIV/AIDSに取り組む全国の若者がそれぞれの活動を紹介しあうプレゼンテーションの企画であった。ゲイ、レズビアンなどのマイノリティの当事者・支援団体や青少年への予防啓発団体を中心に、北海道から宮崎まで全国各地から若者が集まっていた。MERSも発表する団体として参加した。

 発表団体の中でよく使われた言葉が「ピア・エデュケーション」という言葉である。「ピア=仲間」「エデュケーション=教育」の複合語で、上からの抑圧によって感化されるのではなく、仲間同士のコミュニケーションによって予防啓発をすることは感染症の予防に対して大きな影響力があると感じられた。

 予防の情報(性行為など)が事細かに流されていることに少々驚きと戸惑いを受けた。性に関する話題を話すことが、閉じられた空間の話題ではなく、公然と話される時代になっているのだと実感した。また、性に対して閉じられた観念を持つ人でも接しやすいような工夫がされたチラシ、冊子、カレンダーなどのグッズを見て、頭が固い大人では思いつかない自由な発想がユースにはあふれていた。

 MERSは、機材を使用する数少ない団体であったこともあり、司会者の計らいで一番最後に発表することとなった。MERSの活動内容にそくしながら、薬害エイズに関する基本的な事柄の紹介をした。8分間のプレゼンテーションということで、短い時間の中ではかなり制限された内容となったが、観客には目新しいものとして斬新に映ったようである。それほどまでに、薬害エイズはユース世代(今回のフォーラムでは10代と20代)にとって過去のものであるということを痛感した。それゆえに今回、ユースを対象に「薬害エイズ」について発表し、その後も情報提供(雑談、資料配付など)が出来たことは、自分としては有意義であったのではと思う。


【「ワークショップ2/10代の女性の性について考える」(14:00-15:00)】

      神戸アートビレッジセンター

 女性向けの「エロ本」を分析し、その内容をもとにディスカッションを行うワークショップに参加した。最初に司会者(「Girls,Be Ambitious!」という団体)から簡単に10代の女性の性に関する事情を、資料の「エロ本」のコピーを参照しつつ説明、その後3つのグループに分かれ話しあい、そして最後に一つのグループが他のグループに発表し、全体で意見をシェアするという流れで行われた。

 女性向けの「エロ本」があることすら知らなかったので、若者を取り囲む性の事情に関しては驚きだった。10代女性の性に対する意識、性体験の低年化、STDに関する知識の欠如などがあり、その一方で10代女性向けの興味をそそるような不適切な情報が氾濫しているといった状況である。

 ディスカッションにおいては、様々な意見が挙げられ活発な議論となった。印象に残ったことは、10代の女性向けの雑誌においても、男性中心主義的(「男性の喜ばせ方」など)な観点と商業主義的(購買意欲をかき立てるような描写など)な観点の二つの要素が色濃く表れていることが見て取れる。また、別の観点からすると、現在の学校で行われている性教育は十分に知りたい情報を提供してくれない、興味がわかないという意味で二極分化していると感じた。

全体を通じて

 若者が主体的に参加し、自分の意見が反映できるイベントはとても有意義なものであると考えられる。今後もこのような取り組みが続くことを願っている。

 少々残念であったのは、予防啓発に関する問題に焦点を当てられていたために、HIV/AIDSという病気、その苦しさという観点が欲しかったのが本音である。今現在、実際にHIV感染者またはAIDS患者に実際に関わり合いのある若者がどれだけいるだろうか。HIV感染者、AIDS患者とのセッション、または感染症、病気という次元でイベントがあれば、よりHIV/AIDSへの現実味を帯びただろうとも考えられる。

 最後にこのようなイベントを開いていただいたユースフォーラム実行委員の方々、後援である「The Body Shop」の方々に感謝いたします。今後もHIV/AIDSの分野において若者が活躍できるよう祈っております。