第5回 薬害根絶フォーラム 報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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第5回 薬害根絶フォーラム 報告

薬害根絶フォーラムとは

 全国薬害被害者団体連絡協議会(以下:薬被連)が主催となり、薬被連が結成された1999年から毎年行われているフォーラムです。2003年で5回目のフォーラムとなります。前半は薬被連に加入している各団体による薬害被害の実態報告、後半は医療、教育、医薬品などのトピックスに焦点をあてたパネルディスカッションなどが行われます。薬害関係者はもちろんのこと、医療者、学生、一般市民まで、多くの人に薬害に関して考えてもらうためのフォーラムです。

第5回 薬害根絶フォーラム
日時:2003年10月18日(土)13:00−17:00

場所:東京都港区、共立薬科大学2号館 355講義室
主催:全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)
参加者総数:約230人

 第5回 薬害根絶フォーラム 参加報告Ⅰ

(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 理事長 若生治友)

第1部:薬害被害の実態報告

 各薬害被害者団体から被害実態報告が行われた。「産婦人科の薬害」として、薬害肝炎や陣痛促進剤の被害について、ビデオを使用してより詳しく報告が行われた。

 特に印象に残った内容・意見として、

  • サリドマイド被害者:
     近所の子供らが親に対して「あの人はどうして腕が短いの?」という質問をしているのを聞くことがあるが、親がきっちり説明をするどころか子供をたしなめている。正しく理解し子供たちに説明する責任があると感じている。
  • ヤコブ被害者:
     薬害ヤコブ病が発生した当時、医療機関での診療拒否、葬儀社の対応(死に化粧の拒否、荼毘に付すなど)に接して、社会の無知・無理解を解消すべきであると感じている。
  • MMR被害者:
     患者の希望を聞かずMMRを投与した医師によって子供が亡くなった。
  • 陣痛促進剤被害者:
     医師の薬剤能書に従わない処方は厳罰に処すべき。

 このような被害実態を聞くにつけ、医師としての資格・適格性・存在意義に疑問を感じる。医師の誤りを正す意味でも、薬剤師の監視は不可欠であると感じた。

第2部:徹底討論「医薬品販売の落とし穴」

【薬被連の活動報告】
 花井代表は、厚生労働省交渉・文部科学省交渉での要望書提出の背景等について報告した。また勝村氏からは、薬害教育の重要性について述べられた。

【パネルディスカッション】
 
「医薬品販売の落とし穴」というテーマについて、パネルディスカッションが行われた。薬害被害の発生が止まらない現在、規制緩和の名の下に経済効果や利便性を優先し、安全性をないがしろにした医薬品販売等の問題について議論が行われた。

<規制緩和における問題点と意見>

  • 市販薬は広範囲に販売されているため、回収が非常に困難。薬局自体がコンビニ化している。
  • 薬剤師の責任を明確化すべきであり、薬害を最終的に防止できるのは薬剤師である。
  • そもそも現在の救急医療体制が不十分であることが問題であり、早急に整備することが必要である。
  • 必要以上の薬剤を市場に流通させるべきではない。
  • 日本ほどクスリ消費大国はない。医薬分業の意義は大きく、薬剤師の業務を見直し、責任を大きくするべきである。薬剤師会などからのアクションが必要である。
  • 医薬品副作用被害救済を受ける場合には販売証明が必要であるため、市民としても薬剤に対する意識向上が必要。

声明文の読み上げ

 最後に、薬害根絶フォーラムの内容を受けた声明文が読み上げられた。

声  明  文


 私たち薬害被害者は、自らの健康をとりもどす為、無事赤ちゃんを生むために薬を使用しあるいは使用されたはずでした。しかし、その結果はとうてい語り尽くす事の出来ない苦しみと苦痛に満ちた薬害被害の現実でした。

 全ての国民は自分や愛する家族の幸福を願い、その基本としての健康である事を希求しています。医薬品や医療に関するあたらしい技術や製品はそうした願いに応えるべく存在すべきであり、製薬企業等はそうであることを標榜しつづけています。

 しかし、実際には重篤な副作用情報は隠蔽され、有効性だけが大きくクローズアップされた高価な薬が次々と市場に送り出されている現実があります。結果として、健康になりたいと願う患者の思いが、最悪の副作用被害や薬害被害によって打ち砕かれる危険性は増大しています。

 本日、私たちはこうした現状に立ち向かい、薬害発生の連鎖を断ち切り、薬害の恒久根絶を実現すべく、第5回薬害根絶フォーラム開催を機に声明文を発表いたします。

 

一、医薬品が専門家の手によって認可、販売、処方されてもなお、薬害が繰り返され、拡大を防止できなかった事を反省し、専門家の役割、責任を強化すべきである。

 

一、一般医薬品販売においては、薬剤師が患者に十分な情報提供可能な販売体制を確保すべきである。まして、専門家の常駐しない店舗における医薬品販売を可能とする規制緩和は言語道断である。

 

一、専門家教育において過去の薬害の教訓に学ぶ事は薬害根絶を実現するために重要である。また、こうした教育は子供たちを薬害の加害者にも被害者にもしないため、小学校、中学校、高等学校においても社会科、保健体育のカリキュラムのなかで行うべきである。

 

一、過去の誤った血液行政の犠牲者である薬害C型肝炎感染被害者の救済を即時実現すべきである。

 

2003年10月18日

全国薬害被害者団体連絡協議会


 今回の薬害根絶フォーラムのテーマは「それでもコンビニで薬を買いますか?」であったが、安全性を考慮せず利便性を追求する、非常に安易な規制緩和であることが痛感された。自分自身にあてはめてみても反省すべき点が多々あり、国民一人一人の薬に対する意識があまりに不十分であることに啓発活動・行動変容の必要性を感じた。また、情報を提供する立場、いわゆる専門家と呼ばれる職種である医師・薬剤師の業務内容・責任を明確化させる必要があると思われた。

 第5回 薬害根絶フォーラム 参加報告Ⅱ

(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 事務局 鵜川圭吾)

第1部:薬害被害の実態報告

      薬被連代表世話人の花井氏

 薬被連に加入している薬害被害者の団体から、プログラム順に現在の実態報告が行われました。マスコミなどが取り上げるのは一時的ですが、過去に起こった薬害事件が今日そしてこの先々においてまだまだ多くの問題をはらんでいることを感じました。例えば、潜伏期間が長いがゆえに今後も被害者が出てくるであろう「薬害ヤコブ」やHIV・HCV重複感染で現在もなお死者が出ている「薬害HIV」、そして現在個人輸入で40万錠以上も国内に入り、公的なガイドラインもなく投与されている「サリドマイド」などです。被害者が語る言葉には重みがあり、人の心を動かすものがあるといつも思います。

 強く印象を受けたのは「そのような(薬、医療の)知識を持っていれば、こんなことにはならなかったのに・・・」という発言です。知識を持っているか否かでは大きな違いはあります。しかし、持っていたとしても「素人の考え」であるとして医師から否定されたならば、従わざるを得ない状況がまだ歴然とあります。

 そのような医療の問題(不均等な力関係など)を解決すべく、様々な方策が考えられていますが、根底に医療過誤、副作用、薬害事件などによる悲惨な被害者の実態を認識していなければ、医療体制の矛盾は解決されることはないと思います。

 薬害被害者の皆様には被害の実態を伝える語り部として、また現在の医療に疑問を投げかける運動家として、よりよい医療を構築するために力を尽くして頂きたいと思いました。またそのお手伝いができればと思いました。

特集:産婦人科の薬害

 特集では、「陣痛促進剤による被害を考える会」と「薬害肝炎訴訟原告団」が、映像付きで被害報告をしました。

 陣痛促進剤の被害は、医療過誤に近い薬害であり、胎児や母胎に被害を与えるものです。具体的には、産婦人科医が陣痛促進剤の用法、容量を無視して、病院、医療者の都合で出産をコントロールするという、患者不在もはなはだしい薬害であります。また、当日配布資料の中にある2001年度の「日本の出産数」のデータを見て驚きました。2001年度においても、平日の昼間と出産数の多い時間帯が重なっていることが明らかに示されていました。「不必要な医療的処置を避ける」という当たり前の前提が崩される、このことが薬害問題を生みだすきっかけの一つであると感じました。

 薬害肝炎訴訟原告団は、弁護士から被害、裁判の概要説明ののち、原告である山口美智子氏により、C型肝炎に罹ってからの被害体験が語られました。C型肝炎ウィルスが混入した血液製剤が納入された7004の医療機関を厚労省が公表しないことによって、多くの人々は未だに自らがC型肝炎に罹患していることも知らず、早期の治療機会を逃していることが説明されました。「第4ルート1)」の場合、HIVが混入した血液製剤を納入した医療機関は公表されました。HIVは性行為により感染が広がる危険が大きいということで公表されたようです。危機的な状況、または世論の高まりによって重い腰を上げる行政の体質をまざまざと示しています。医療のように人の生命に関わる厚生労働省ですらそのような態度であることにはあきれてしまいます。


1)・・・血友病またはその類似疾患のための治療ではなく、その他の疾患の治療にHIVが混入した血液凝固因子製剤を投与し、HIVに感染した事件。

報告/討論 医薬品販売の落とし穴

 討論では、医薬品販売の規制緩和に関してですが、そこから医薬品が自由に売られる事の弊害、薬剤師の専門性、副作用被害への救済など様々な話題が出て、非常に興味深いものになりました。その中でも印象に残ったのは、薬害オンブズパースンの方の発言でした。要約して記述しますと、

「医薬品販売の方向性は二つの理念、

  • 市場原理に任せて、規制緩和を広げ、薬剤師不在でも自己責任において自由に薬を使えるようになる。
  • 医師-薬剤師を経由し、安全性を可能な限り高め、制限された中で薬を処方されることである。

のどちらを市民が選択するかにおいて決まってくる。」

 確かにその通りであると思います。ここで頭に入れておかなければならないのは、「医薬品」は純粋な自然物ではなく、人工的に調合された化学物質であり、重篤な副作用のリスクが現れる可能性が高い物質であるということです。その感覚が今の国民の中に浸透してから、上記の二者択一がなされるべきであろうと思います。個人的には、「医薬品」という生命を脅かしかねない物質にまで、商業主義的な規制緩和が広がることには懸念を抱えざるを得ません。

 今回の医薬品の規制緩和は、急に始まったわけではありません。医薬部外品がコンビニエンスストアなどで売れらているように、医薬品の規制緩和の延長線上に今話題になっている「早朝・深夜の医薬品販売」があります。今回だけに限らず、今後も医薬品の規制緩和に関する動向に注目していかなければならないと感じさせられました。