MERS ニュースレター No.7 巻頭言 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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MERS ニュースレター No.7 巻頭言


 新年あけましておめでとうございます。新たなる年を迎え、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 個人的なことですが、昨年12月初め、立て続けに2人の親しい友人の訃報を聞きました。今年の正月は、いつになく、重たく、悲しいものとなってしまいました。彼らは非常に熱く、また自分たちの治療や医療ついて真剣に考え、よりよい医療を作り上げてきました。そして患者の自己決定・自己選択という考え方の重要性を再認識させてくれました。つきつめて考えれば、今こうやって、私がMERSとして活動しているのも、彼らと知り合ったからです。

 彼らがいなければ、HIV診療の地方ブロック拠点病院体制、HIV感染者の身体障害認定、抗HIV薬の拡大治験・迅速承認審査などが、実現されなかったと言っても過言ではありません。確かに厚生労働省・医療機関等の多くの人々のおかげで、現在のHIV医療が成り立っていますが、HIV訴訟の和解をきっかけに、本気で自分たち患者の医療を何とかしようと考えて行動したのは、彼らのような人間の存在があったからです。このような人たちのことを決して忘れてはいけないと思います。

 先日、ある医師が、献血血液における安全性について「被害者の救済制度を優先すべきで、安全のための投資が賠償金を上回る場合は、安全対策に使うお金を賠償金に回した方が社会の損失が少なくなる。」という意味の発言を行っていました。確かに、この件に関して多くの人々が議論すべきだと考えます。しかし、誰かがこのような考え方をすることはあっても、医療に関わる人間がこのような考え方に立つのは非常に疑問です。

 何らかの被害が起きたとき、その本人・家族の人生は大きく変わります。まして、お金で被害を受ける前の状態に戻れるならともかく、その後の治療や生活を考えると、決して金銭的救済で十分であるとはいえません。ちょうど昨年7月30日に「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」が施行されました。今後は、私たち一人一人が、輸血医療や血液製剤に関する理解を深め、自分たちの医療を選択し決定していかなければならないと思います。特に薬害エイズに関わった方は、その意義をより大きく感じているはずです。

 同様のことが、欧米の先進的医療をいち早く導入しているHIV医療にもいえると思います。ひいては一般の医療にも同じことが必要であると考えます。患者自身の意識変革も必要ですが、それ以前に医療現場での意識・行動変容が求められている時代であると思います。まさに医療を提供する側、すなわち医療従事者の方々が試されていると思います。本当の意味での、患者の自己決定・自己選択ができる治療環境、患者の視点に立った医療が可能になれば、少なくとも悲惨な薬害の防止が実現できると思います。もちろん一人一人の権利を尊重する時代が来れば、感染症に対する無知・無関心・無理解などによる差別もなくなることでしょう。

 私の友人たちも、そんな未来が来ることを、心から望んでいたと信じています。

 

2004年1月5日
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
理事長 若生 治友