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【寄稿】凝固因子製剤の回収問題から考える薬事行政の課題について

<筆者>
花井 十伍

特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 理事
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 血液事業部会 運営委員会 委員


事の起こり ―― コージネイト回収問題

 2016年10月2日、バイエル薬品は、遺伝子組み換え型血液凝固第VIII 因子製剤「コージネイトFS バイオセット」を同日から回収することを発表した。回収されるロットは、この時点で日本で承認されている規格から外れるものではないものの、有効期限内に力価1)が規格を下回る可能性があることから、予防的に回収を実施するとの説明がなされた。同日に非公開で開催された、薬事食品衛生審議会血液事業部会運営委員会において、参考人として出席していた、血友病の専門医からは、なぜもっと早く情報提供がなされなかったのかと疑問が呈された。アメリカ合衆国においては、7月と8月にすでに回収が実施されており、7月回収ロットは、合衆国の規格から外れたものであったが、8月に回収されたロットは、日本での説明同様、その時点では規格内であるものの、有効期限内に規格から外れる可能性がある為に回収されたものであり、その事実は、すでにFDA(アメリカ食品医薬品局)のホームページ上で公表されていた。つまり、早期の情報提供どころか、本来8月の時点で日本においても回収に踏み切る必要があったのではないかという当然の疑問が生ずる。この点について、バイエル薬品は7月8日の段階でドイツ本社より、米国製造元の安定性試験で規格外の試験結果を認めたとの連絡を受け、7月13日には大阪府と国に報告し、至急参考品を試験するよう指示を受けたとしている。そして、8月22日に試験が終了し、8月の時点では全てのロットが規格内にあることを8月26日に国に報告するとともに、1月ごとに力価のモニタリングを行い回収時期を見極めたいと相談し、その結果として9月18日に日本の該当ロットも力価低下傾向があることが判明したため、9月21日の社内会議で力価低下傾向にある全ロットの回収を決定し、26日と27日に大阪府と国にその旨報告したと説明している。

 力価低下の原因は、製造ラインの洗浄に使用した過酸化水素が残留し、有効成分タンパク質の酸化が促進されたというものであり、酸化の促進は、通常品の酸化プロセスと変わりあるものではなく、また、残留する過酸化水素も微量であることから、結果から言えば、安全性に問題は生じないと考えられる。

 もちろん、上述の経緯においてもさまざまな問題があるが、本稿の目的は、今回の自主回収の経緯を詳述することにはない。むしろ、このような事態において、各関係者は、いかなる責任を負っているかを確認することによって、薬事行政上の制度的不備について検討することにある。

 

1)・・・ここでは凝固因子活性のこと。規格では、使用期限内に80%を下回らないこととなっている。

 

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