特集 薬害肝炎訴訟東京判決:寄稿 武田せい子氏 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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特集 薬害肝炎訴訟東京判決:寄稿 武田せい子氏

東京判決後座り込み行動に参加して

≪筆者≫ 武田 せい子 (薬害肝炎大阪訴訟 原告)


注釈に※のある写真は「薬害肝炎全国弁護団ホームページ」より転載しました。

 裏切られた「期待」

 「座り込み」という言葉を聞いたのは、東京判決前ぐらいからでした。もし勝訴になっても、厚労省が話し合いに応じないときは身体を張った行動にでるというものでした。
 しかし私は2006年8月1日結審後、約8ヶ月も先延ばしされていた判決に、何か重要な意味があるのかもしれない、勝訴はもちろんのこと全面解決になるのかもしれないという期待がありました。
 3月22日の判決前集会にも参加し、他地裁の原告の方たちとのふれあいで、明日の判決に向けて確かな確信を得たような気になっていました。
 翌23日、東京判決は晴天にふさわしく勝訴でした。しかしまたもや厳しい線引き勝訴であり、明暗が分かれました。
 評価するところは、クリスマシン被害に企業の責任が明確になったこと、この被害が薬害であることを明確にしたことでした。
 すぐさま判決後集会があり、厚労省前行動にて全面解決に向け厚生労働大臣との面談を要求しましたが、「裁判中は会うことが出来ない」というコメントに「座り込み」という抗議行動に出ました。淡い期待はもろくも外れました。

左:笑顔を垣間見せる原告ら 右:咲き誇る桜に見守られながらの座り込み行動

 たくさんの方々の支援に感謝!

         座り込み初日の様子

 ハンセンやHIV訴訟時の座り込みは、本や原告の皆様の報告で聞いていましたが、当初、本当にこんな事をして有利になるのだろうかという気持ちがありました。ハンセンの時のように国会前での長期にわたる座り込みとか、HIVの時のように2月の寒い季節で皆さんの同情が出そうな季節ならともかくも、桜の花が咲き、外に出るには暑くもなく寒くもない季節では皆さんが関心を持ってくれるのだろうか、花見の邪魔になるだけではないだろうかという懸念がありました。
 しかし28日朝から、弁護士の方々や支援してくれているたくさんの学生さん達がてきぱきとお手伝いして頂いたおかげで、厚労省前の公園の座り込み場所に、立派なメッセージつきのテントやのぼり、イスに専用のゴミ入れまできちんと設置してくれました。
 いざ始まってみると、不安な気持ちを持つまでもなく、オープニングからリレートーク、シュプレヒコールとあわただしく時間が経ってゆきました。
 民主党の議員さん達は山井議員、家西議員はじめ大挙して応援に駆けつけて頂き、励ましてくれました。菅直人議員や小沢代表までもが一人一人に握手をしていただき、大いに私達原告は勇気づけられました。また川田龍平氏や共産党の小池議員、社民党の阿部議員、そして選挙中の東京都知事候補、黒川氏、浅野氏、吉田氏も来て頂きました。原爆訴訟、塵肺訴訟の方々、歌手の横井久美子さんや櫻井よし子さんも駆けつけて頂きました。
 もちろんマスコミもたくさん来て頂き、連日放送してくれました。また、学生さん達は厚労省クリーン作戦と題して厚労省前を掃除、厚労省前の薬害根絶の碑をアピールしたりしました。

左:激励に駆けつけた民主党・菅直人議員 右:学生らによる「厚労省クリーン作戦」

 矛盾する国の肝炎対策

 最初の頃は弁護士の方々も「控訴はないだろう」と言われ、私達もやりがいを感じていましたが、30日には、国が控訴するとの情報が流れていると暗い顔で報告されました。その言葉を聞き、やはりこれは無駄だったのだと非常にガッカリし、また腹も立ってきました。
 山西弁護士が「この憤りを皆さんも厚労省に訴えましょう」と言われた時は腹立たしさもピークに達し、「私達肝炎患者は、裁判をする何年も前から国に対し肝炎患者の治療体制の充実を訴えてきましたが、根本的解決には程遠く、その間にもたくさんの仲間が亡くなってゆきました。年間3万人以上の仲間が亡くなっているのです。それが裁判を起こせば財政難で解決できないという。国が放置したおかげでたくさんの肝癌患者を生み出したのです。肝癌には高額な治療費がかかりますが、もっと前に政策をとっておれば高額な治療費を使うことがなく、財政難を理由にしていることは大いに矛盾しています。国は肝炎患者が死に絶えることを望んでいるとしか思えない。それでは人殺しと同じではないか」ということをまくし立てました。後で冷静になったとき、無謀な自分自身に驚きました。

左:マスコミ取材の様子 右:弁護団からの説明を聞く原告ら

左:テレビ生中継の様子 右:座り込みは深夜にまで及ぶ

 

   薬害肝炎大阪訴訟 原告 武田せい子氏

 患者が訴えないと・・・

 私は産婦人科にて子宮筋腫と内膜症の処置中、血管を突き破られ大出血を起こし、心不全、心肥大を併発、その後急性肝炎になり、総合病院へ転送となりました。インターフェロン治療も2度経験しました。
 平成5年にはインターフェロンの治療中、免疫力低下のためか乳癌になり、全摘出手術も経験しました。現在まで11回の入退院を繰り返しながら働いてきました。
 また、母は昔大阪で看護婦として働いていた経験から、肝臓の病気が大変であるということをわかっていましたので、色々な漢方薬や治療方法を聞いてくれ、連れて行ってもくれました。心労がピークに来ていたのでしょうか、私が癌と聞かされた夜、脳出血で倒れ現在も寝たきりの生活になっています。
 医療とは本当に怖いものだと思いながらも、その医療機関に足かけ16年勤めました。勤めた経験から、これは国の政策がきちんとしていないことに尽きると思いました。
 現在肝炎患者は老齢化が進んでいます。30年も40年も治療費を払い続けているのです。今後いただける年金は少なくなる一方ですが、医療費は老人にも容赦なく負担させています。その老人に高額な治療費捻出をさせる国が健全であるはずがありません。
 国は国民病と言われるほどたくさんの患者を出す前に手を打つべきでした。患者が訴えないと変わらない世の中はおかしいと身をもって感じました。

 「全面解決」に向けて

 29日に公明党が内閣官房長官あてに「薬害肝炎問題の全面解決を求める申し入れ」をして頂いたおかげか、30日に官邸にて官房副長官が会ってくださることになり、そこで安倍首相の代弁として「今後政府と与党が一体となり薬害肝炎解決にのぞむ」という返事を頂いたことにより座り込みは解除されました。まだまだ解決には程遠い感じですが、少しでも前進したことに変わりなく、今後も頑張って行かなければなりません。
 今後も皆さんの応援が世論を動かし政府を動かすことになると思います。今まで同様ご支援の程、宜しくお願い致します。