薬害根絶デー2006 報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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薬害根絶デー2006 報告

薬害根絶デー(2006年8月24日)
厚生労働省との協議、成果と課題


≪筆者≫
全国薬害被害者団体連絡協議会 代表世話人
特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 理事  花井 十伍

2006年 薬害根絶デー(交渉)
日時:2006年8月24日
会場:文部科学省交渉→厚生労働省前リレートーク→「誓い碑」前の交渉→厚生労働省交渉→報告集会
主催:全国薬害被害者団体連絡協議会

参考資料


 厚生労働省前リレートークにて、花井十伍氏(中央)

 薬害根絶デーの厚生労働省との協議は、薬害根絶「誓いの碑」の前で、直接厚生労働大臣に要望書を手渡し、この要望書に基づいて協議を行うことが慣例となっている。また、この場においては、係争中の団体からの要望も大臣が受け取りを拒否しない事ももはや慣例化していると言っても良いだろう。こうした慣例は、薬害根絶「誓いの碑」に刻まれた碑文の内容について、厚生労働省側も被害者側も毎年再確認することの意義に異論が無い事を意味している。しかしながら、総論としての合意は、必ずしも個別の薬害問題をすみやかに解決に向かわせる原動力足りえていないこともまた現実である。

 むしろ裁判所が次々と厚生労働省にとって厳しい判決を下すなか、厚生労働省の姿勢はむしろ堅さを増しているようにも感じられる。今回の個別協議もこうした国の姿勢が随所に滲むものとなった。

 薬害肝炎について

 厚生労働省の回答は、総論として国は肝炎対策に取り組んでおり、そもそも有効性を評価されているフィブリノゲン製剤による肝炎のみに特化した対策は考えていないし、こうした患者の命を救うためにかつても現在も有効な製剤に関して国賠訴訟を提起されるいわれはない、という実に訴訟を意識した答弁に終始した。もちろん、薬被連側にも多くの反論があるものの、議論が平行線をたどる事が明らかであることから、インターフェロン治療へのアクセスを阻害している要因に関する事など、国が標榜する総合的対策の問題点をいくつか指摘していった。国は担当課が来ていない事を理由にその場での回答を留保、別途説明する機会を持つ事を承諾した。

 一般用医薬品の販売体制を刷新した改正薬事法下における省令等の諸規定について

 この問題は、法案策定の前段階から、薬害被害者が正式な検討部会に参画しており、被害者の意見を聞かずに細かい規定を決めてしまわない事を確約した。改正薬事法は既に国会にて成立しているが、施行までに新たな資格である登録販売者資格試験の有り様や陳列方法、各リスク区分に応じた表示の方法など多くの重要なルールを成文化しなければならない。厚生労働省は、これらを被害者と協議の上決定することを確約した。

 陣痛促進剤のリスク説明を母子健康手帳や母親教室のテキストに記載する件について

 母子健康手帳に陣痛促進剤のリスクという記載がなされたのは、被害者団体が粘り強く交渉した成果であるが、依然としてリスク内容を明示していない。母子保健課は、慎重に検討したいという回答を示したが、具体性を欠いている。母子健康手帳改定に際し、検討会を開催する場合としない場合があるとの事だが、掲載の是非について連絡することを約束したので年末までに再度確認の必要がある。

 医薬品副作用被害救済制度について

 救済申請請求期限の延長については、やっと改定する方向で検討が始められた段階であるとの回答である。抗がん剤が対象医薬品になるためには、抗がん剤によるがんの治癒可能性が高まり、副作用頻度が他の医薬品並にならなければ困難との事であるが、医薬品が救済対象医薬品か否かを決定する手続きについては厚生労働省側も十分理解しておらず継続的課題となった。胎児の遺族救済に関しては、文化的コンセンサスと線引きの問題であるとの認識については厚生労働省も認めたが、あくまで法的根拠にこだわる態度には変わりはなかった。しかしながら、担当者も心情的には理解を示し議論の俎上にのせる可能性は否定しなかった。

 予防接種の安全確保について

 予防接種に関する情報収集は、副反応報告と任意調査を行っている事を説明したのち、被害拡大を防ぐための迅速な対応については、現在年一回しか開催されていない検討会を年2回から4回に増やす事を検討中との回答であった。また、医薬品としては、GMP調査をPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が行う体制となった事が説明された。しかし、薬被連側とのやり取りのなかでは、副反応を前提とした予防接種の扱いと医薬品同様に副作用への迅速対応との認識の溝があり、予防接種だけはある程度悠長な対応を容認している行政の回答に苛立つ局面があった。しかし、回答を全体としてみるとMMRが失策であった事が前提となった前向きな議論ではあったといえる。

 レセプト同様の診療明細の発行について

 当初、医者が説明しているから問題ない、というこれまでの議論の経緯を無視したとんでもない回答が為された事に被害者側から怒りの発言が相次いだ。中医協へ被害者の要望を伝え、厚生労働省としても主体的に取り組むよう強く要望したが、基本的には当面現状で見守るとの態度を変える事は無かった。この問題は多分に政治的要素が存するものの、開示の方向性はもう変わる事が無いと信じたい。

 薬店による医療用医薬品販売問題について

 23法人、767店舗で違法な販売が行われていたと説明された。取り締まりの強化を求める薬被連の要望について、自治体における薬事監視員が今回の事態を防げなかった実体が明らかにされ、行政法に基づいて自治体権限で監視する現行体制の問題点のみが浮き彫りになった。この問題は今後も根本的解決を求めてゆく必要がある。