取材報告 シンポジウム「医療の闇に立ち向かう」 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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取材報告 シンポジウム「医療の闇に立ち向かう」

医療情報の公開・開示を求める市民の会 設立10周年記念シンポジウム
「医療の闇に立ち向かう」 参加報告


(文責:特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権 事務局 鵜川圭吾)

医療情報の公開・開示を求める市民の会 設立10周年記念シンポジウム
「医療の闇に立ち向かう」

日時:2006年4月1日 13:30~16:45
会場:エルおおさか 第6階会議室
主催:医療情報の公開・開示を求める市民の会

 当日の流れ

       特別記念講演 勝村久司氏

 当日は200名収容の会場が満杯になるほど多くの聴衆が集まり、関心の高さが窺えるイベントでした。はじめに市民の会の前事務局長の勝村氏から、設立から10年の成果を振り返る記念講演があり、そして第一部では医療過誤の被害実態報告、第二部では山本医師、岸本弁護士からの講演、第三部はパネルディスカッションと盛りだくさんの内容でした。

設立10周年特別記念講演:医療の情報公開 この10年の運動の成果と今後の課題

 勝村氏から、この10年間の医療情報の公開・開示の変遷について新聞記事の抜粋を参考資料(表1)に講演がありました。

 設立当初、医療情報の開示は「何が医療の現場において問題なのか」を知るための手段であったが、今は「医療情報公開こそが必然的に良い医療になるのではないか」と締めくくられました。

表1 配布資料より抜粋

 第1部 医療被害者による実態告発

 医療過誤被害の実態について5名のスピーカーが発表しました。陣痛促進剤の杜撰な使用により今なお深刻な被害が起こっている事例、前立腺ガンの見落としの経過が不明かつ適応外の手術を強行された事例、無断で臨床試験に参加させられた事例など様々な報告が挙げられました。その中にはカルテ改ざんの報告もありました。詳細は紙面の都合上取り上げられませんが、「医療過誤はよくないが、カルテの改ざんはさらに悪い」という、事実がねじ曲げられかねないことに対する被害者の憤りを強く感じました。

 第2部 医師・弁護士らによる講演

 医療過誤の事実を確定する大きな手段として、解剖と公益通報者(内部通告)があります。

 法医解剖に携わっていた立場として山本氏からは解剖に関しての基礎知識、医療過誤が疑われた事例についての講演がありました。死因の種類(病死自然死、外因死)や解剖の種類(系統解剖、病理解剖、法医解剖)等の用語の説明、その後医療行為と関係ある死亡例を何例か説明しました。その中で死因の解明には解剖所見とカルテ等の医療記録が重要で、カルテが改ざんされていないことの必要性が述べられました。ちなみに山本氏は、「山本医学鑑定研究所」を設立し、法医解剖に携わっていた経験をもとに、法医学、医療過誤のコンサルタント業務をしています。

 次に岸本弁護士からは、平成18年4月1日から施行された「公益通報者保護法」について概説しました。この法律は「不正を内部告発した社員らを企業が解雇したり、左遷したりすることを禁じる」法律です。内部告発が医療過誤の真相に迫る意味で非常に重要ですが、本法律の限界によって返って内部告発を妨げる可能性があることも報告されました。限界として、通報できるのは会社役員以外のいわゆる労働者のみであること、また報道機関等の外部への通報できる要件は、

  1. 証拠隠滅の危険性がある。
  2. 不利益な取り扱いを受けるおそれがある。
  3. 企業に告発したのに二十日以上たっても調査が開始されない。
  4. 個人の生命、身体に危害が生じる切迫した危険性がある。

のいずれかのケースに絞られたこと等も限界の一つです。外部に通報できるか迷った場合は、まず弁護士に相談すればよいことが紹介されました(守秘義務があるために通報にはならないそうです)。

 第3部 パネルディスカッション

 パネルディスカッションに先立って、市民の会の岡本氏より過去2年に相談を受けた内容とその対応が報告されました。カルテ記載不備のあった医療機関や保健師助産師看護師法に違反している産婦人科に対して、行政(保健所)から指導に至っている事例があることを知り、新鮮でした。また情報の種類に合わせて個人情報保護法、カルテ等診療情報開示制度、情報公開法など様々な制度を活用している事など興味深い内容でした。

 パネルディスカッションでは、カルテ改ざんに関する海外(米、独、英)の内情も報告されました。海外では滅多なことでは改ざんは起きないという状況だそうです。アメリカでは、カルテ改ざんが発覚した場合のリスクが大きいことが影響しているようです。カルテ改ざんが発覚した事例では、医療者が加入する医事賠償保険が効かないこと、通常認定される損害賠償額に上乗せして懲罰的な損害賠償が加算されるケースや、改ざんがあったということで医師の反証を許さないという認定の事例があります。カルテ改ざんはリスクマネジメントの一環として考えられているようです。他にもドイツでは全医師が加入する医師会が厳しく制裁を科したり、イギリスでも保険医の団体からの厳しい制裁などが報告されました。

第3部 パネルディスカッションの様子