特別寄稿 知り、考え、動く高校生の歩み | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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特別寄稿 知り、考え、動く高校生の歩み

「るるくめいと」が薬害シンポジウムで発表するまで
知り、考え、動く高校生の歩み


≪筆者≫ 大阪府立松原高等学校  平野 智之 (ひらの ともゆき)


大阪府立松原高等学校教員。1999年から「るるくめいと」マネージャーとして高校生のピア・エデュケーション活動を支援してきました。共著『るるくで行こう!』(学事出版)

 はじめに

 「松原高校るるくめいと」が、今回、大阪人権博物館での特別展「HIV・AIDSとともに生きて」最終日のシンポジウムに参加させてもらうことになりました。その簡単な歩みとエピソードを紹介しながら、何故、「薬害シンポジウム」に参加することになったかを紹介します。

 「るるくめいと」の簡単な紹介

 1999年春、松原保健所の保健師の飯沼恵子さん(現(2006年7月当時)大阪府和泉保健所)は、高校生向け『性とエイズを考える「るるく講座」』を提案されました。

 「るるく」とは、知、考え、動、の最後の一文字、から飯沼さんが命名されたものです。自分たちからエイズについて「知る」ことで「動く」=「行動すること」を目指したものでした。2日間の講座に参加した生徒は修了証をもらい、高校生のピア・エデュケーターグループ「るるくめいと」が誕生したのです。

 2年目から、学校内外で発表=「出前授業」の機会を頂くようになり、それが、その後の活動の中心になりました。

 出前授業では、

  1. エイズの知識を問うクイズ
  2. HIV感染のしくみを説明するペープサート1)「免疫四兄弟」
  3. セックスについて高校生の葛藤を描いた劇「Lovin’ you」および「コンドーム実習」

を行っています。


1)・・・紙に絵をかき、棒につけたものを使って舞台で歌や物語などを演じること。表を裏に返しやすく、裏表を使った効果が面白い。背景の絵や色をくふうしたり、人形を何面もの折りたたみ式にしたりして、応用も幅広い。

ペープサートを用いた説明
(2006.6.18 シンポジウム『HIV・AIDSとともに生きる-「薬害エイズ事件」の教訓-』より)

 「るるくめいと」が出会ったこと

 数年にわたって活動をしてきた「るるくめいと」ですが、その道は、出会い、悩み、学びながらの歩みでした。

 2003年夏、公演を依頼された団体から突然「コンドーム実習」を中止してほしいとの連絡が入りました。またある公演では参加者の一人から「あなたたちがそんなことするから若者の性が乱れるんや」と言われたこともありました。

 世の中の厳しい風(バッシング)に直面した「るるくめいと」は悩み、みんなで話し合い、次の公演では、胸を張って次のように話したのです。

「コンドームの使い方を説明するといつも、コンドームさえ着ければセックスは自由というように受け取られますが、決してそんなつもりで言っていません。セックスするかどうかを決める時、相手の立場に立って話し合ってほしいのです。その時に最低知っていてほしいのがコンドームの使い方なのです。」


 また、ある大学で、“公演内容が陽性者の方やセクシュアルマイノリティの方から見ても、不快なものになっていないか”という提起を受け、それから毎年HIV陽性者の方からの聞き取りを欠かさず、同性愛者の方からも直接お話を伺う機会も持ちました。

 そこで、劇「Lovin’ you」は男女のカップルという設定で行われていたこと、また、HIV感染の仕組みを説明にも、陽性者やエイズ患者の方とどう生きていくかという視点が弱いことに気づきました。

 それから公演の最後には、「カップルの設定はあくまでひとつの例であり、さまざまな愛の形があること」「HIV感染しないためのコンドームの装着という言い方が陽性者を排除する考えにもつながるので、コンドーム装着が当たり前の世の中になるためにセイファーセックスを勧める」という説明を行うようになりました。こうして「誰にも不快に思われない公演をしよう」は「るるく」の合言葉にもなりました2)


2)・・・こうした歩みを『今あなたにも伝えたい ~高校生が作ったエイズ・ピア・エデュケーションのーと』(せせらぎ出版)として一冊の本にまとめました。是非ご一読下さい。

 関心と出会いを広げて

 こうした出会いと気づきを見守りながら思ったのは、社会の「薬害エイズ」に対する関心の低下と被害者の方々の現状を考えて、何か高校生とできることはないか、という考えでした。そこで、これまで「るるく」の企画を生む原動力となった松原高校の「コンペ」のひとつのテーマとして取り上げようと考えました。

 松原高校では、1年次「産業社会と人間」の発表大会を「コンペティション」と題して様々なテーマについて、生徒が「企画作りとプレゼンテーション」を競ってきました。

 今年のコンペティション2006は次のようなテーマとジャンルに分かれて行われました。

テーマ:
 『ハートフルプレゼント』

ジャンルの例:

  • もっと知って!野宿者のこと! 
  • 遊びで子ども力を引き出そう!(クリニクラウン ~臨床道化師に学ぶ)
  • LIVING WITH HIV/AIDS!


 『ハートフルプレゼント』(心の火を灯そう)を大きなテーマに、野宿者理解との交流やクリニクラウン(臨床道化師)を新たなジャンルとして取り上げましたが、1年生で「HIV・AIDSとともに生きる」をテーマに選んだ生徒は約60名いました。そして昨年11月企画作りの過程で、大阪HIV訴訟原告団花井十伍さんのお話をうかがうことにしたのです。

 花井さんは、血友病という病気や薬害の歴史、そして、ご自身が友人に感染を打ち明けた経験もお話しいただき、生徒たちは熱心にメモを取っていました。

 学校に帰って、生徒たちの企画作りが始まりました。あるグループは、花井さんの体験を聞き取りで印象に残った点を脚本にし、人形劇を作りました。

 又あるグループは、生徒たちが生まれた頃に起きた「薬害」なので、歴史を知ることから始め、裁判での証言などをインターネットなどで丁寧に調べ、教室で高校生が学習するという設定の劇にし、「薬害エイズ」の事実を伝えようとしました。どのグループも、教員の方で少しは助言をしましたが、シナリオはすべて生徒たちが悩んで書き上げたものです。

 2006年2月の「コンペ2006」で、MERSの若生さんらを審査員に迎え、発表を競いました。その優秀な発表を組み合わせて、「るるくめいと」として活動を始めた生徒たちが大阪人権博物館で発表したのです。

 高校1年生(当時)が作ったもので、リアルタイムで「薬害」のことを知らず、基本的な知識も十分と言えないので、「検査のシーンはリアルでない」とか一部でご意見もいただきました。今後もそれを学習につなげたいと思っています。

 しかし、和解から10年を迎えた今年、こうした取り組みを通じて、若い世代が「薬害エイズ」を語り継ぐ意味は決して小さくないと考えています。

 「高校生が性やエイズについて明るく発表しよう」と始まった「るるくめいと」が、HIV陽性や薬害エイズ被害者の方々、また、セクシャルマイノリティの立場に立って物を考えてみるようになりました。つまり、「動く」からまた「知る」「考える」につながっているのです。

 まだまだ性教育をめぐる厳しい風を受けることがあるでしょうが、これからも「るるくめいと」たちは、これからもエイズの活動を通じ人や社会の見方を広げ、自分たちで活動を学びにつなげていくことでしょう。

るるくの感想
2006.6.18 シンポジウム『HIV・AIDSとともに生きる-「薬害エイズ事件」の教訓-』を終えて

 大勢とはいえないけど、関心があってきてくれた人達の前で発表することができて楽しかったです。最初リハするときに、会場は誰もいていないのにすごく緊張してセリフが飛んでしまったり、自分の番なのにボーッとしてたりと、本当に大丈夫かなと思うくらいあがっていました。けれども本番で、松原高校の『るるく』のことが紹介されて出ていったとき、大人っていうのもあるけれど、興味があって来ているから発表しやすかったし、見えないけれど、良い雰囲気の空気が伝わってきて応援されているような気がしました。今日の発表を最初の一歩として悪い点もたくさんあったから、徐々になおしていきたい。そしてこの『るるく』を通して、どれだけ自分の力が伸びていくか限界を知りたいと思いました。もっと発表が好きになりました。
(橋爪)
 まさか1年のときにやった発表がこんなリバティの大舞台でやると思ってなかったのですごくビックリしました。自分が1年の時の班は、病院や会社での差別について取り上げたので、裁判のことは、初めてで『こんなことがあったんだ』って改めて思いました。本番前々日になって骨折したりして、一時はどうなることかと思ったけど、みんなが助けてくれたのでちゃんとやり遂げることができた。花井さんからとか質問されることがあったけど、全然答えられなかったので、質問とかされたら答えられるようにしたいです。
(高松)
 どこまで伝わっただろう?伝えられただろう?初の公演ということでものすごい緊張した。薬害エイズの本を読んだり、インターネットで調べたりして、できる限りの知識をつけようとしたけど、やっぱりむつかしいと思った。でも、大切なことだから、伝えていきたいという気持ちがありました。私がAIDSの勉強をしようと思ったのは、知識がないことで相手を傷つけたくない、と思ったことと、私の身近にも、実はそういう人がいることを知ったからです。今後の『るるく』の活動に薬害のことも取り入れていきたいです。
(左野)
 今回、私達はリバティ大阪で発表して人前に出る大きな発表は初めてだったので、すごく緊張しました。私が思っていたよりも、会場に来ている人が多かったので驚きもしました。発表しているときに、すごい聞いてくれているなぁと感じました。それが私にとってはすごく嬉しかったです。でも、同時に「私の説明はわかりやすいんかな?」と不安になりました。聞いてもらうのなら少しでも理解してほしい。理解できなくても知っていてほしいと、来てくれた会場の人を目の前にして「伝わってほしい」と今までより思うようになりました。
(根元)
 リバティ大阪で発表したのが外での活動の一回目だったのですごく緊張しました。私は学校でおもに、ペープサートを中心にしてきました。ペープサートは花井さんのお話を聞いてそれをもとにして作りました。リバティ大阪ですごいいい体験ができました。
(石田)


るるくめいとのみなさん
(2006.6.18 シンポジウム『HIV・AIDSとともに生きる-「薬害エイズ事件」の教訓-』より)