薬害根絶デー2005 報告 | ネットワーク医療と人権 (MERS)

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薬害根絶デー2005 報告

≪筆者≫
全国薬害被害者団体連絡協議会 代表世話人  花井 十伍


 全国薬害被害者連絡協議会(以下、薬被連)は、厚生労働省の正門前に薬害根絶「誓いの碑」が建立された8月24日を「薬害根絶デー」として毎年文部科学省と厚生労働省との協議を開催してきました。6回目となりました今年の「薬害根絶デー」での協議を簡単にお伝えしたいと思います。

 薬被連が行う「薬害根絶デー」の行動は、文部科学省への要望提出・協議と厚生労働省への要望提出・協議の2つです。特に厚生労働省への要望提出にあたっては、「誓いの碑」の前で直接大臣に提出するのがここ3年の慣例となっています。また、「薬害根絶デー」実施当時から常に裁判継続中の団体が薬被連に参加しており、主に裁判を行っている団体と支援者を中心としたリレートークや情報宣伝活動、集会などが関連イベントとして開催され、この日は丸1日薬害根絶三昧ということになります。

「誓いの碑」前行動(左から、花井十伍氏、尾辻秀久・厚生労働大臣)

 文部科学省交渉

          文部科学省交渉

 今年の文部科学省との協議では、大臣の出席も期待されましたが事実上の選挙戦突入ということでお預けとなりました。文部科学大臣との直接面談は、6年前からの悲願でもあることから是非近いうちに実現したいと考えています。公教育において薬害の問題を扱うよう要望しましたが、「中央教育審議会で審議中であり、薬害被害者の要望を伝える」との回答にとどまりました。前年度から継続協議事項となっている「薬害副読本」については、厚生労働省の責任編集ですすめることになりましたが、その後予算確保が困難だとして進展が行き詰まっています。専門教育の分野では、薬学のモデルコアカリキュラムのなかで現代社会と薬害をとりあげていることなどが紹介されるにとどまりました。生涯教育に関しては、一般市民向け講座が50万件を越えることから実態把握は困難であるとしながら、都道府県単位で人権教育推進啓発センターが市町村の取り組みを調査公開しているとのことでした。また、10月の人権担当者会議における周知が約束されました。国立大学病院について研修に薬害被害者の声を聞く機会をもつよう事務部長会議で周知してゆくことと、医薬品の単価の判る領収書の発行についてはまだ2つの大学病院にとどまっていることが回答されました。

 総じて、無難な回答に終始した協議となりましたが、いくつか具体的取っ掛かりも示されたことを受けて、特に文部科学省との協議を行う必要性を認識するきっかけともなった公教育と大学附属病院関連の問題についてできるだけ早期に大臣と直接協議を行う場をもちたいと思います。

 厚生労働省交渉

          厚生労働省交渉

 厚生労働省の協議について、今年は比較的各団体の提案要望をそのまま協議議題としました。昨年まで、最大公約数に基づく要望を策定してきて議論が抽象化、儀礼化してきたのではないかという問題意識によるものでした。イレッサの市販後間もない販売拡大の要因であると考えられる誇大広告取締に関しては、主に医薬品まがいの健康食品などの取締を強化していることは紹介されたものの、治験中の新薬に関する宣伝行為は、単なる情報提供と宣伝を厳密に分けることが困難であるとの理由により事実上取り締まっていないことが回答されました。イレッサの場合、企業がかなり巧妙な販売戦略を実行していたことは間違いないだけに、現行法の厳密な運用が期待されるとともに実質的な規制がしやすい法整備の必要性も痛感させられました。フィブリノゲン製剤納入先リストを元にした患者のフォローアップ対策については、 カルテの不存在を主張する医療機関に対する踏み込んだ対応が必要とされるわけですが、C型肝炎一般論を議論する専門家会議報告に基づき、うまく一般論にすり替える回答となりました。カルテの保存期間を楯に、カルテが存在しないと回答した医療機関にもさらなる協力を要請する必要があるわけですが、なかなか壁が厚い印象です。予防接種に関する常設の委員会が設置される件については、この委員会が副反応に関する検討を行い情報提供し、副反応の重症度と頻度を中止基準として早期対策にも与する予定であることが説明されました。また日本脳炎ワクチンのADEM症例認定数などが説明されました。イレッサの累積投与患者数や平均投与期間などもMR調査による具体的数字が報告されました。陣痛促進剤のリスクに関する妊婦への情報提供に関しては、まったく問題を理解しない回答がなされ、あきれかえった被害者側が上司に相談して回答し直すことを求めた一幕がありました。

 厚生労働省との協議は結果として細かい問答となり、薬被連としての要望までは時間を割くことができずに終わりました。さらなる協議スタイルの洗練が課題となった訳です。

 個人的には、薬被連の活動が多様かつ深くなってゆくことは歓迎すべきことだとは思いますが、やはり薬害根絶デーについては、もう少し参加者全てが一体感を感じることができる協議や集会を工夫した方が良いのではないかという感想も持ちました。